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特集 | 第49回JA全国女性大会 農と共生の世紀づくりは私たちの手で |
OLやめて農業参入 ユリの切り花栽培で規模を毎年拡大 |
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高橋京子さんの「細腕奮闘記」 |
◆休耕田を取得して
坂田 農業を知らない東京のOLがどうしてまた田舎暮らしの農業にチャレンジされたのですか。すごい決断でしたね。 高橋 都会よりも田舎が好きなんです。学生時代からずっと東京でしたが、将来は郷里の新潟県関川村にUターンしたいと望んでいました。しかし生家は元温泉旅館で、農地を持ちません。ところが2000年春に村内で休耕田が手に入ることになったため思い切って約80アールを買い入れました。 坂田 農地取得には難しい条件がいろいろつきますが。 高橋 ええ。そのために急いで東京の会社をやめ、住所を生家に移すなど就農態勢を整えました。そして県の改良普及センターに相談し、シベリアという品種のユリの栽培を選択しました。普及員に信頼感を抱いたので<この人の指導で勉強すれば大丈夫>と直感に頼りました。 坂田 ぶっつけ本番では不安も多かったと思います。 高橋 今も最大の不安は田の水はけです。国は畑地化をいうなら基盤整備を急ぐべきです。 ◆水はけ対策で曲折 高橋 そこで2年目までの作付予定面積に当たる約20アールに限って暗きょ土管を入れました。表土をはがした地層に30センチ客土を入れ、再び表土をかぶせました。初年度はこうして自らの意気込みを示しましたが、費用がかかりすぎました。
坂田 水はけ工事の面積をさらに広げる必要がありますが。 高橋 改めて安価な方法を考えます。 坂田 結局、初年度はどれくらいの作付面積でしたか。 高橋 01年は380平方メートルに球根5000を植えましたが、02年は1650平方メートルつまり16.5アールに2万球と飛躍的に増やし、さらに昨年は約25.7アールに3万2750球としました。 坂田 すごい伸びですね。施設面はどうですか。 高橋 簡易パイプハウスを初年度の1棟から03年には14棟に増やしました。これは白い遮光ネットを張って真夏の太陽光を遮るだけのハウスです。だからビニールハウスのように加温はせず、また雨も風も通します。基本的に露地栽培と同じです。パイプ数の少ない構造で、風に弱く、ビニールは張れません。 ◆どんぶり勘定排除 坂田 いやあ聞けば聞くほど土地代はじめ土地改良、施設、資材と大変な投資ですね。 高橋 農業に対する知識も体験も道具もない、ないないづくしからの起業ですから、長靴、作業着、クワ、カマなどすべてが新規調達です。しかし近所の農家の庭先で「あら、これいいわね」なんて便利そうな道具に感心していると「持っていけよ」と不要のものを下さったりすることもあります。何はともあれ5カ年計画から大きくはずれないようにしないと。 坂田 OL時代は経理の専門家だと聞きましたが、5カ年計画とはさすがですね。 高橋 10カ年計画もあるんですよ。しかし予期しない出費もあります。田んぼの水はけ対策が最大の予定狂いです。 坂田 細かい話ですが、会計ソフトを使っているのですか。 高橋 いえ、エクセル1つで自分なりにやっています。 坂田 球根は輸入ですか。 高橋 オランダからです。JA経由で入れています。うちは就農後すぐに法人としてJAにいがた岩船に加入しました。 ◆土づくりを追求 坂田 ユリの花栽培のポイントは、やはり土づくりですか。 高橋 そうです。健全な土づくりが1番です。前提としては水はけがありますが、この2つが整って、有機質を十分に含んだ土ができたら、追肥しなくてもよいとかで飛躍的に効率化できて、農作業が楽になります。 坂田 コンバインで刈って裁断し、土に返すから、国内でワラを集めるのは大変です。 高橋 とにかく束ねたワラを買うのは困難なので空地のカヤを刈ったりもしています。 坂田 ユリの病害虫は? 高橋 田んぼの中に畑が1つという環境ですからね。割合、発生しません。化学肥料も農薬もなるべく使わないようにしています。それでも成績が良いのは土が新しいからともいえます。しかし、まだ3年ですから今後はわかりません。そこで災害が発生しないようにと菌耕農法を採用しています。 ◆利益率向上目指す 坂田 さて、販売面ですが、出荷本数はどうですか。 高橋 初年度は5000本。昨年は3万本です。白いユリは冠婚葬祭用から贈り物用、自家用と用途が幅広く、シベリアは小売店の定番商品でもあり、ほかの種類の花に比べると、安定した値段の推移での取引になっています。 坂田 姉さんの担当は? 高橋 姉は東京にいてマーケティング担当ですが、売り方を研究して利益率を上げる段階に入っています。そのために直販や地産地消を考えています。地元には温泉旅館が多いから直接販売すれば利益率に貢献します。これからは経営の質的な面を考える段階です。 ◆厳密なランクづけ 高橋 JAへの出荷は市場をはじめ流通各段階での手数料を合計すると2割にもなってくるため農家はみな、その点に大きな問題意識を持っています。 坂田 ユリの花の等級はどうなっていますか。 高橋 一般的に秀、優、良の3ランクです。しかし部会はもっと細かく厳密にランクづけしています。このため、うちは選別作業にパートさんを雇っています。 坂田 近所の農家は稲作ばかりですか。 高橋 そうです。うちは80アールといえども転作ですから、村にくるコメ減反の配分が、それだけ消化されるため、水田の農家から喜ばれています。 坂田 仕事のルーティンは? 高橋 4月20日に開始し、10月末に終わります。うち花の収穫は8月1日から10月初旬までです。 坂田 転作にからんで、コメ政策改革について何か感じていることはありませんか。 高橋 水田農業の活性化とか麦・大豆の本作化といっても村には園芸農家が私を含めて2人しかいません。これでは要件にかなう規模の畑地化は困難で、とにかく面積要件とか認定農業者に限るとか助成要件が難しいのです。
(2004.1.29)
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