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特集 | 第49回JA全国女性大会 農と共生の世紀づくりは私たちの手で |
女性の視点で農業振興 女性営農指導員が成長 将来は男性と半々に |
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JAとぴあ浜松(静岡県) |
◆精力的に「出向く営農指導」 着実に固める農家の信頼
一見、普通の娘さん。よく笑う20代だが「農業関係の知識は高いし、まじめだ」と組合員が評価する通り、ユニフォーム姿で精力的に車を駆る毎日だ。 ここでは、現場や組合員宅へ「出向く営農指導」をするというJA全国大会の方針が着実に実行されている。 また生産者は作りやすい品種を選択しがちだが、そうではなくて、消費者が買いたくなる品種を作らないと売れないというマーケティング志向の販売戦略についても、彼女たちは熱心にアドバイスを続けている。 全国のJAに先駆けて女性指導員を導入した同JAの実績を見て、最近は、ほかのJAでも女性指導員採用が増えてきた。
同JAは組合員6万1000人。全国屈指の広域大型JAで販売品の販売高240億円(14年度末)。野菜だけでも120品目と多彩な生産を誇る。生産組織は44にのぼり、その内訳は販売高や共計の有無などにより部会・協議会・研究会・分科会に分かれている。 このため座談会には野菜、柑橘、花きの生産者代表に絞って出席してもらった。 ◆娘が相手の感じ ――どういう思いで営農指導員を志望したのですか。
小林 農学部出身ですし、できれば農業生産の現場に出たいという気持ちでした。食品会社の試験も受けましたけど。 鈴木 サラリーマン家庭に育って農業体験はありませんが、農業の勉強を生かしたかった。ほかの会社にいけば例えば実験ばかりさせられたりして生かし切れないと思いました。大学では卵のたんぱく質の研究をして実験が多かったのですが…。 加茂 私は園芸に興味がありました。収穫後生理学という学問を勉強したので、実際に農産物にかかわる仕事をするには農協がいいなと思いました。 小林 私は乾燥地農業の改善にケナフという植物を活用する研究をしていました。 ――女性営農指導員が「地域農業に新風を吹き込んだ」などといわれますが、どうですか。 杉山 彼女たちがくる前の指導員は男ばかりで、ある程度は押しつけ的な指導の進め方があったかも知れません。しかし女性の場合は特有の感性や、やわらか味があるから、生産者側の受け取り方も変わってきたのじゃないかという感じがします。 大村 男性指導員との付き合いが長いのですが、やはり堅くなるというか、例えば用件だけをポンポンといって帰ってしまうとかいうことが結構あって、こっちが中身まで突っ込んで聞きたくても、ちょっと、ということがありました。 ◆農家の話に学ぶ 加茂 1年目は先輩の男性指導員と回っていました。 小林 私は西営農センターに配置されていますが、管内は品目数が多いものですから、最初から、いきなり1人でした。 鈴木(一) 西管内は1人でいくつもの担当品目を持たなくてはいけないので大変です。西地区支店の経済担当の手が空いていればいっしょに回ってくれるのですがね。 ――組合員の質問に答えられない時はどうするのですか。
加茂 私は3年目になりますが、まだまだ生産者のほうが、よほどよくご存じのことがたくさんありますから、対応できない時は、その話をよく聞いて、それから勉強して、さらに勉強したことを、ほかの生産者に話をできるようにするということで、とにかく話を聞きます。 ――わからないことを母校に問い合わせたりしますか。 小林 畑のことに関しては農家のほうが断然よく知っているので、先輩の男性指導員に聞いたりもしますが、ちょっと学術的な面になりますと、私は静大出身なので、そちらの担当教官に電話で聞きます。 加茂 私も静大ですが、電話で教えてもらっています。 ――男性指導員も問い合わせをやっていますか。 鈴木 大学だけでなく、研究機関、企業、農業改良普及センター、保健所などへよく電話していますよ。 ――そういう点では男女の仕事のスタイルは同じですね。 ◆農政課題に対応
鈴木 例えば、ミカンの場合、新しい台木の調査や栽培講習会の開催などを連携したり、また統一した防除暦を生産者に配れるようにと試験場や経済連などといっしょに防除暦作成検討会を開いています。今年からは生産者全員が防除暦を提出していただくことになっています。 ――話題は、営農指導員の広範囲な仕事に及んでいますが、トレーサビリティ(履歴管理)の記帳運動についてはいかがですか。 鈴木(一) 野菜では生産日誌に必ず記帳して出荷前に提出すること、それによってJAが出荷できるか、できないかを判断する、それがないと出荷できません。そこまできていますから記帳運動は浸透しています。安全・安心の取り組みに関しては無登録農薬問題もあります。 ――「とぴあ」のように作物の種類がバラエティに富んでいるJAでは管内の特産物がたくさんあるでしょう。マイナー作物に対する農薬の使用規制は大問題です。このままでは地域の特産物がなくなってしまいます。登録農薬の適用拡大が必要です。 鈴木(一) 農薬なしでは野菜は作れませんからね。それで適用拡大に取り組み、生産者の会議を毎晩9時ごろまで続けたこともあります。小林さんも出席しますから、夜遅くまで、だいぶ苦労させました。昼は県との交渉などもあります。 ――農政課題の仕事が次々に出てきますねえ。 小林 マイナー作物問題は、営農指導の立場から、もうほんとに困っている状況です。生産者に迷惑をかけるわけにはいかないし、何とか進めたいと思って、やってきましたが、今後とも登録拡大が進むように行政に働きかけます。しかし問題は山積みなので…。 ◆記帳運動進める 鈴木(一) 今までの経過措置をもとに拡大へ、という話をしています。また登録には、公的機関に各種試験を委託しなければなりませんが、その費用はマイナー作物の生産者も可能な範囲で負担し、登録拡大に向けた下準備をしています。 ――ミカンのほうの記帳運動はいかがですか。 杉山 1000人余りの生産者がいますが、基本的には出荷前の10月に生産日誌を提出しないと出荷できないことになっています。記帳は当然のことなので、さらに一歩進めて個々のチェックをより強めることを考えています。そうすることで量販店の対応が違ってきますから。 加茂 花の栽培でも多分、記帳をするようになると思って書式などは生産者に渡してあります。現状ではまだ記帳はされていません。 鈴木 始まったばかりなので講習会に出たりして記帳を勉強していますが、生産者には大変めんどうです。もっと書きやすい様式にならないかを検討して毎年少しずつでも改良していく必要があります。16年度は途中でチェックできるように確認欄を設けました。 ――様式の改良の手順は? 鈴木 指導員が打ち合わせて内容を検討し、部会の役員や生産者に見ていただきます。 杉山 様式はJA一本ですが、何年か経てば慣れも出てくるから、より高度なものに向かって記入していく必要があると思います。 ◆結果出して喜ぶ
鈴木(一) 葉菜類は種類が多いから、作物によって、いろいろな記帳の仕方が考えられます。それをどのように集約し、1つの体系にしたらよいのかが問題です。同じ品目でも施設栽培と露地栽培で、使う農薬も違ってきます。 鈴木 何事も基本的には、思った通りにはいかないことが多いのですが、しかし、この仕事をしていて、よかったなと思うことは、出荷物を見て、いいものができた時です。自分が講習会などで勉強して、そして指導したものがどうなっているか、気にかかりますから、結果が出ていれば、ほんとにうれしいと思います。 杉山 県のミカン品評会では、この5年間に、「とぴあ」の組合員が3回も農水大臣賞をもらっているのですよ。 ◆悲しくなる時も 加茂 私も、うまい具合に花が咲いてくるとよかったなと思います。さらに、それが高く売れれば、いっそうよかったと思うし、やはり出荷物の品物がよいとうれしいですね。 小林 私がひとこといっただけで、病気とか、できの悪い畑が、よくなったと、報告を受けた時はうれしいですね。そういうことがないと畑にもいきにくくなってしまいます。 ――悩みや困りごとはどうですか。もちろん仕事上で。 鈴木 経験不足もあって、質問されても、うまく答えられない時は、まだまだ勉強が足りないなあと落ち込みます。その点、ほかの仕事と、ちょっと違うかなあと思います。 加茂 私は農薬と肥料の名前がなかなか覚え切れないのが悩みです。担当品目の花が多く、それぞれ農薬と肥料が変わってくるため頭の中がごちゃごちゃになって、すぐにはこたえられないのです。 小林 病害虫を見て、なんでこうなっちゃったのだろうと悩む時もあります。 鈴木 出荷物の目揃会の時に、私から「傷の多いミカンはジュース原料に回して下さい」といわれた組合員が「うちのミカンにはどうして、こんなに傷が多いの?」と聞いてきます。 ◆「時間を下さい」 小林 野菜ではマイナー作物用の農薬問題のほか、品目によって種子の問題も課題です。 鈴木(一) 私はプチベール(非結球型芽キャベツ)という新野菜を作っていますが、毎年形が違っちゃうのです。これは種子に問題があります。これでは営農指導のしようがない。だいぶ苦労していると思います。 小林 品種の選定とかも、どんどんやらなければいけないのですが、なかなか自分の時間が取れなくて。また担当作物以外のことは把握できていないため農家から「悩みを聞いてくれ」といわれても対応できず「時間を下さい」としかいえない時はつらいですね。そんな時は男性指導員と比較されますから。 鈴木(一) 最近は定年退職後に農家の後を継ぐ人が多いため、JAの営農指導員なら、だれに質問しても答えられるのが当たり前だという考え方です。 小林 私は時間をかけて農家とつき合っていきたいので1、2年で担当品目を変えないようにしてほしいと思います。 鈴木(一) 関連品目の中で変わるのはいいのですが、余り極端な変更は農家としてもつらいですね。 ◆販売力の強化へ ――販売力強化に向けた営農指導と女性指導員の役割という点はどうでしようか。
小林 プチベールのような特殊な品目は、量でなく、品質で売り込んでいく野菜ですから、とぴあの産物なら大丈夫といわれるものにしていこうと指導しています。反面、生産部会が大きくなって一日に何千ケースも出荷する野菜は、品質が上がったから量が減ったということがないようにと考えます。市場に対しても量をキープしなくては売れなくなってしまいます。 杉山 生産と販売は表裏一体であるべきだと考えます。ミカンでは最近、消費者が酸に弱くなっており、こくのあるミカンを目指した私たちも、今年産は酸を弱くしました。それでもまだ酸が高いといわれます。 鈴木 安ければ売れるわけではありませんから、やはり品質ですね。ミカンの場合は味をもっと分析して意識的に作っていくことが大切です。 鈴木(一) 流通の途中の話はいつも変わってきて、よくわかりません。最先端の店先の話を聞き、消費者が本当にほしいものを作るべきです。生産者だけ、販売者だけの考えで行動してもだめです。両方の調和によって、どちらもトクになるようなマーケティングが必要です。 ◆長く続けての声
加茂 花は少量多品目化が進み、毎年、新品種を導入していますが、その時に生産者は栽培しやすい品種を重視して選択しますが、売れなくてはだめですから、流行色をねらうなど絶対に売れるという話し合いをしながら選んでもらっています。 大村 市場は、黄色いスイートピーなど、こちらができない商品を求めてきます。また現状は1日置きの出荷ですが、これを毎日にしてくれという無理な注文もつきます。そこで指導員に多少でも毎日出せる方法を考えてほしいと頼んでいます。 加茂 服装も花も流行色は同じだから女性は色に敏感です。 ――女性指導員に対する期待はすでに語られていますが、最後にもうひとこと、注文も含めてお願いします。 杉山 女性の感性など、いい面が販売につながって、生産者のプラスになると思います。期待あるのみといえます。女性指導員は、いい形の中で成長してきていると見ています。 鈴木(一) ひとこと苦言を呈するようですが、女性はいい商品を作ろうと一途になって一本調子になる場合があります。男性の場合は、ある程度で折り合いをつけますが、女性にはそれが難しいようです。農家との関係をさらに円滑にするためには、大局的な柔軟な判断も必要だと思います。 大村 女性には結婚・出産とかいろいろありますから、これからも、1年でも長く営農指導を続けて欲しいと思います。
(2004.2.2)
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