2月5日から2日間開かれた第50回JA青年大会では、お天気キャスターで気象予報士の森田正光さんが、異常気象について軽妙な語り口で分かりやすく講演、会場を沸かせた。 　ラジオの子ども電話相談にも出演していた森田さんは、子どもの素朴な質問に驚くことも多かったという。しかも、ありきたりな答では、「ウソだと分かる」。そんな体験から月並みなことを伝えるより、恐れずにどんどん思ったことを話すことが大切では、という。きちんと話すことがしっかりした情報提供にもなると語ってくれた。

◆恐れずどんどん自分伝えて

　――JA全国青年大会の2日目は参加者による恒例の1分間スピーチで始まりました。森田さんは講演の最初に、楽屋で聞いていてなかなか面白かったとおっしゃってましたね。

　森田　やはり自分しか知らない体験、驚きなどを話すことがいいんじゃないでしょうか。あたりさわりのないことはあまり面白くないと思いますね。
　私はラジオの子ども電話相談室の回答者もやっていましたが、「コンプレックスを解消するにはどうしたらいいの」という質問があった。答えとして、努力して克服しようね、とか、気にしないようにしよう、ということでは月並みで子どもだってそのウソ性というものを知っていますよね。
　そのとき回答された方に私も感心したんですが、答えは「隠し通せ」だった。コンプレックスがあることを人に分からないようにすればいいというわけです。しかし、目に見えてしまうことにコンプレックスを感じている場合もあるわけですね。そのときは「笑ってごまかせ」、でした。回答された方は実によく分かっている人だなと思いましたね。
　だから、これは言わないほうがいいかな、などとあまり考えずに恐れずどんどん自分を伝えようとすることが大事なんじゃないかと思います。

◆青年部の仲間は強みになる

　――自分の考えをきちんと伝えることは、自分たちの農業についてきちんと情報を伝えるということにもつながりますね。

　森田　講演や取材で全国を回ることも多くなりましたが、地方に行くと素朴な人や親切な人が多いですね。協力しながら生きているという感じもします。あまり濃密な人間関係というのも少しうっとうしい面もあるかもしれませんが、都会暮らしのようにほとんど人とのつながりがないのも寂しい。だから地方には人間関係の原点があるような気もしています。
　その人間関係があって全国の青年部の仲間ということになっているわけでしょう。うらやましいなと思いました。これからは消費者は品質や安全性を農産物に求めていくと思いますから、情報が当然重要になってくる。そのときに青年部のみなさんのつながりが強みになるんじゃないでしょうか。また、情報によって作る側にとっても質が均一になり、さらによりいいものが作られるという面もあると思います。

◆情報の活用で新時代を

　――会場からは今年の天候を心配する質問も出ました。一方で気象などについて正しい知識、情報が求められています。

　森田　講演でも強調したように昨年の冷害によって気象が異常な時代になったと考える人がいますが、そうではなく異常気象というのは何年かに一度は必ずあるということです。「寒さの夏はおろおろ歩き」と宮沢賢治が書いた前から必ずある。ですから、冷夏になりそうだったら対策を立てるほかない。
　ただ、そのときにどういう情報を持っているかどうかです。
　たとえば「落石注意」という標識がありますね。そんな情報があっても、石が落ちてきたときには間に合わないから無駄だという話がありました。しかし、その情報を持っていると、何かぱらっと落ちてきた瞬間に、石だ！、と即座に気づいて対処できる。それがないと何だろうと思っているうちに被害にあってしまうかもしれない。
　雨が降るという情報があれば傘を用意できる。農業にとって情報はものすごく重要ですが、大事なのはどうやって活用するかということだと思います。
　確かに気象災害は大きな被害をもたらしましたがこんなこともありました。
　1991年の19号台風で青森県のリンゴに大きな被害が出ましたね。しかし、落ちなかったリンゴは、「お守りリンゴ」として受験生に人気で値段が上がって売れた。同じ商品でもちょっとした発想で変わるわけです。
　日本の農業は品質のいいものを作ることに尽きると思いますが、一方で転んでもただでは起きないというぐらいの発想ももってがんばってほしいと思います。　（２００４．２．２０）