JA全青協40周年の記念として作られた新JA青年の歌「君と」の作曲者がカズヒロさんだ。実はカズヒロさんは昨年までの7年間音楽活動を停止していた。再開のきっかけになったのは全青協の全国委員長会議だった。カズヒロさんに「君と」の生演奏の依頼があった。久しぶりに人前で歌い、「もういちどやってみるか」と38歳からの再スタート。各地のJA青年部に招かれて盟友たちの前で歌うことも多い。「青年部のみなさんの大きな笑顔を見ると自分も励まされます。もらう力と同じ力を贈りたいと思っています」。 |
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◆「もう歌わないんですか」の一言に
22歳のときバンドでデビュー。ソロになって「君と」を作曲したのが28歳。その後、思うように音楽活動ができず故郷の仙台に戻る。30歳。妻と幼い娘がいた。
「建築現場で働いていました。音楽業界は数字を出さなければいけない世界。うまくいかず逃げてしまった面もあった。
5、6年たったある日、現場の仕事仲間から、カズヒロさんですよね、もう歌わないんですか、ファンなんだ、と言われたんです。ああ、こんなふうに思ってくれる人がいたんだ、自分のことだけ考えてやめてしまったんだなあと。もう一度、音楽の世界に戻りたいという気持ちになりました」
地元では知られた存在。現場を転々とする職業なら知る人もいないと思い、元歌手であることも隠していた。が、そこにもファンがいた。
◆思いこもる再出発の「君と」
活動再開のきっかけはJA全青協がつくった。一昨年、当時の門傳会長が仙台で開催される全国委員長会議で「軽い気持ちで歌ってみないか」と声をかけたのだ。同じ仙台出身、門傳会長にとっても「君と」の作曲者のその後は気がかりだった。
「プロダクションの社長も、よしもう一回やってみるかと言ってくれた。リハーサルは自宅でした。歌ったときは緊張で体中が震えた。でも、みんなの気持ちが跳ね返ってきて、伝わっていると手応えを感じました」
千葉一弘をカズヒロに改名して2003年にライブ活動を再開。昨年のJA全国青年大会ではゲストライブも行い、各地のJA青年部などのイベントに招かれるようにもなった。
「建築現場でもまれてカムバックして、青年部のみなさんの背丈にやっと追いついたかな、仲間に入れてもらえるかなという気持ちです」
昨年末にリリースしたCD「Na Na Na 光に向かって/パパにできること」にはアコースティック・ギターだけで歌う「君と」を収録した。作曲から10年、いわば「君と」の再出発版だ。同じ歌だが、支えてくれた仲間や家族への想いが、よりこもっている。
◆笑顔からエネルギーもらって
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マキシシングル「Na Na Na 光に向かって/パパにできること」 |
そして、新曲「Na Na Na〜」は「君と」への「アンサー・ソング」だという。7年間続けた建築現場での仕事と家族との日々を歌った曲だ。
「昔はラブソング主体のポップスでしたが、これからはファミリーをテーマにしていきたい。妻、娘、仲間への思い、父である自分を見つめて等身大の世界を歌っていきたい」。
「現場で苦労している人にどれだけ近づけたか分かりません。昨年は冷害でしたが、青年部の人たちと現地で話しても苦しいとか、つらいとかは聞きませんでした。
むしろ笑顔で迎えてくれる。その笑顔が大きいんですよね。見るたびに建築現場で働いていたころの光景がなぜかオーバーラップして励まされるような気がしています。自分がもらう力と同じ力をみなさんに贈れるような歌をつくっていきたいです」。 (2004.2.20)