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特集 元気な地域づくりとJAバンクの役割 |
インタビュー JAバンク中期戦略の着実な実行・展開 |
ローン拡大と店舗再構築2本柱で中期戦略を展開 |
佐藤純二 農林中央金庫常務理事 インタビュアー 青柳 斉 新潟大学農学部教授 |
◆JAバンクシステムの成果
青柳 約2年前に稼働したJAバンクシステムの成果について、どう評価されていますか。 佐藤 組合員・利用者の皆さまから、まずまず評価をいただいているのではないかと思います。その証しとして、一昨年4月のペイオフ一部解禁後もJA貯金は比較的堅調に対前年比で伸びていることが挙げられます。また、平成13年3月から減少を続けていたJA貸出金も昨年11月に対前年比で増加に転じました。 青柳 この2年間で不良債権の問題も、かなり改善されたと受け取っていいのでしようか。 佐藤 来年4月のペイオフ全面解禁を控え、財務健全化の取り組みを進めてきました。「JAバンク基本方針」に基づく破たん未然防止の取り組みを通じ、不良債権の処理も相当進め、不良債権比率は他業態に比べ低水準にあると思っています。 青柳 JA貯金の伸びから判断しても、他の金融機関と比べ健闘しているように見えます。JAに対するペイオフ全面解禁の影響や今後の対応についてはいかがですか。 佐藤 ペイオフ全面解禁については、一部に再延期論も出ているようですが、JAバンクにおいては、あくまで予定どおりの解禁を前提に準備を進める必要があります。 ◆中期戦略の実行で危機を打開
青柳 JAバンク中期戦略策定の背景にある問題認識をおうかがいしたいと思います。 佐藤 「JAバンク基本方針」は、農林中央金庫の役割として「JAバンクの総合的戦略を樹立する」ことを定めています。この中期戦略は、ここでいう総合的戦略との位置付けです。
青柳 中期戦略の最大のポイントは何ですか。 佐藤 JAバンクローンの伸長による収益力向上と、店舗再構築を中心とした効率化によるコスト削減、この2つが軸になります。 青柳 JAの貯貸率は平均30%ほどであり、運用力強化の観点からも貸出をさらに伸ばす必要があると思います。しかし住宅ローンの分野には、住宅金融公庫の廃止を控え、大手銀行だけでなく、他の業界からも参入しています。JAが住宅ローンを拡大していくには、どのような取り組みが必要ですか。 佐藤 一つには、相談対応型のローン推進が挙げられます。JAバンクとしては初めての試みになりますが、5月および10月に全国統一の休日住宅ローン相談会を開催する予定です。また、大手住宅メーカーや地場工務店等向けの新しい営業チャネルを導入し、定着化させます。住宅ローンの大きな需要が見込まれる地域を中心に全国130箇所に「ローン営業センター」を設けることも計画しています。 ◆厳しい環境のなかで収支を確保 青柳 中期戦略では、店舗の統廃合についてもふれていますが、その意義などを具体的にご説明下さい。 佐藤 まず、JA本来の役割である、組合員や地域の農業振興に対し貢献するという目的を中心に考える必要があります。一方、現在の収支状況では、利ざやがますます縮小する中、先行きを見通すことが難しくなりつつあります。 ◆組合員・利用者への配慮が必要 青柳 都市部のJAは、支店あたりの貯金量で100億円くらいを確保していますが、地方の農村部の支店は30億円未満が大半です。店舗の統廃合は地域から見ると大きな課題です。組合員離れも心配です。そのあたりの配慮が必要ではないかと思います。 佐藤 おっしゃるように、一部の地域の店舗では、貯金量が少なくて収益があがらないけれど、組合員との関係から店舗を閉鎖しにくいという事情もあります。店舗を閉鎖すれば、それまで利用していた組合員にとって不便になるというご心配もごもっともです。 青柳 JAによっては、移動店舗による対応などの代替措置をとるケースもありますね。 佐藤 もう一点申し上げますと、JAは総合事業体ですから、信用事業だけでなく、経済事業や共済事業もあわせて営む店舗があり、それぞれの事業と足並みを揃えることが不可欠です。そこはJA全中とも十分に連携しながら、検討していく必要があります。 ◆統合県での取り組みについて 青柳 現在までに、信連との統合はいくつ実現しましたか。 佐藤 宮城・岡山・栃木・秋田・長崎・山形の6県で信連との統合が実現しています。16年度内に、さらに3県の統合を予定しています。 青柳 統合県では、農林中央金庫が直接JAとやりとりを行うのですね。 佐藤 そうです。これは統合県だけのことではなく、それ以外の県のJAも含まれますが、現在、JAバンクシステムの運営によってJAバンク中央本部に各JAからモニタリングの報告書が半期ごとに提出されてきます。これを分析し、各JAの経営改善などについてご意見やご提案をしているところです。このような仕組みにより、JA経営の課題なども以前に比べてよくわかるようになりました。これらを踏まえ、統合県の各JAと一緒に一層がんばりたいと思います。 青柳 どこまでJAを指導できるかが課題となりますね。 佐藤 県域によって状況は異なりますが、支店にJA担当を配置して、JA毎の特性に応じた対応を行っています。統合県での業務はスタートしたばかりですが、これからも業務を通じてお互いに認識を深めていくことが大事ではないかと思っています。 青柳 統合の次に見えてくる大きな課題ですね。色々と貴重なお話をありがとうございました。
(2004.4.9)
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