農業協同組合新聞 JACOM
   
特集 安全・安心な畜産物の生産基盤と販売事業の強化−JA全農の畜産事業

耕畜連携した環境対策への取り組みを強化
畜産総合対策部 緒方康久部長

JA全農畜産事業本部は、昨年6月に、組合員の負託に応えるために、国産畜産物の販売強化と経営の安定化を主要課題として、▽地域別飼料会社の未整備地区の早期実現▽畜産販売事業の会社化▽生乳共販事業や酪農生産基盤事業の広域指定団体への集約および乳製品事業の会社化を基本とした「畜産事業改革構想」を取りまとめ、その取り組みを進めている。
 さらに、家畜排せつ物法の完全実施に向けて、系統畜産農家における畜産環境対策施設の整備についても引き続き取り組みを進めている。
 畜産事業を取り巻く環境は依然として厳しいものがあるが、16年度は▽安全・安心な畜産物を消費者に提供するための取り組み強化▽直販事業を中心とした販売事業強化▽飼料・畜産資材の事業競争力強化と取り組み拡大▽畜産環境対策事業の取り組み強化、を最重点課題として取り組むとともに「事業改革構想」の具体化に取り組んでいくこととしている。
 そこで、これらの重点課題を中心に畜産事業本部各部に取材した。

 畜産総合対策部(緒方康久部長)の16年度重点取り組み課題は、県域プロジェクトに参画した食肉センターの経営改善の促進、全中と連携した17年度以降の畜産・酪農政策要求等の取り組み、そして、環境3法への対応と畜産環境対策の取り組み強化がある。

◆全畜産農家の施設整備完了を目指して

緒方康久部長
 特に、今年11月1日から完全に施行される「家畜排せつ物法」に対応した「未整備農家の畜産環境対策施設整備の促進」と、「耕畜連携強化のため、環境保全・畜産有機堆肥利用促進モデル事業の普及促進と高品質堆肥生産の促進」など、畜産環境対策の取り組み強化が、今年度も重点課題だ。
 「未整備農家の畜産環境対策施設整備の促進」としては、15年4月からJA全中とともに「ふん尿処理に関する緊急全国畜産農家個別点検・整備運動」に取り組み、系統畜産農家の施設整備を促進してきている。
 その結果、施設整備が必要な系統農家戸数は、15年12月末の約1万1000戸余から、2400戸余の施設整備が進み、今年3月末には8800戸余となっている。この8800戸のうち、3月末時点で、いまだ施設整備の方向性が定まっていない農家が2000戸余残っていると推定される。
 平成16年度は、家畜排せつ物法が完全施行される年であり、JAグループとして「16年度畜産酪農要請運動」の取り組みを通じ、個人設置を対象とした畜産環境対策施設の整備に係わる「補助付リース」について、301億円(15年度予算は210億円)の事業予算化を農林水産省の理解を得て実現することができた。
 今年度は、この事業を効果的に活用し、系統畜産農家の施設整備の実施に向けて、JA・県経済連・全農が連携して施設整備の促進をはかっていくことが重点課題だと考えている。
 また、シートなどによる簡易処理施設であっても、農地にコンクリート等を施工することとなれば、農地転用などの諸手続きが必要となり、設置までには2〜3ヶ月の時間を要することも考えられ、早急な取り組みが必要となる。
 現在、畜産環境対策室では、県別巡回などの取り組みを進め、農家の整備方向を確認するとともに、10月末までにすべての農家の施設整備の完了を促進することとしている。
 なお、今後、施設整備の方向性が定まっていない農家では、簡易処理での対応が増えてくるものと思われるため、そうした駆け込み需要に対応できる体制を全農畜産サービス(株)と連携して準備している。

◆低コスト・高品質堆肥、散布サービス求める耕種農家

 「家畜排せつ物法」の完全施行後も、シートなどの簡易処理で対応した農家が恒久的な施設へ変更するときのフォローや、共同処理への対応などを行っていくこととしている。
 しかしながら、畜産環境対策の施設整備は、耕畜連携など農業環境問題への「通過点」であり、施設でできる堆肥などをどう流通させ、耕種と連携した循環型農業をJAグループとしてどう確立していくかが、これからの大きな課題となる。
 耕種農家へのアンケートによると、畜産有機堆肥を利用するには「低コストで高品質」「堆肥センターによる運搬・散布サービスの実施」という要望が多い。今後、こうした要望に応えて耕畜連携を進めていくためには、JA堆肥センターの機能強化が求められている。
 このため、JA全農では、平成13年から実施している「畜産環境対策関連要領」の見直しをおこなうとともに、JA堆肥センターの更なる機能強化と充実をはかり、耕種農家による堆肥利用の促進を支援する取り組みを継続・強化することとしている。

◆流通・高品質・需要拡大を促進する支援を実施

 平成16年度の「要領」は▽JA堆肥センター畜産有機堆肥流通促進要領(流通促進)▽JA堆肥センター高品質堆肥生産促進要領(高品質生産促進)▽JA堆肥センター堆肥需要拡大要領(需要拡大)の3つを柱として、それぞれ一定の要件を満たしたJA堆肥センターに所定の支援をすることにしている。

◆ハードとソフトがかみ合って初めて成果が

 現在、JAの堆肥センターは全国に400か所以上あり(この「要領」登録センターは245)、「要領」にもとづいた事業を実施しているセンターは、15年度実績で約70センターである。10月末までに、農家を含めたハード面(施設)は一定の条件が整うことになるが、耕種との連携を含めたソフト面の充実が重要となる。環境問題への対応は「ハードとソフトがかみ合って初めて一定の結果がでてくる」ものだからだ。そのためには、こうした「要領」を活かして、JAがリーダーシップをとって地域で、耕種と畜産農家が連携し、意見交換をしたり交流する場をつくっていく必要がある。家畜排せつ物法完全実施はその絶好の機会だといえる。
 畜産環境対策室は、6月に全国5ブロックで、「要領」の説明会を実施するなどして、耕畜連携した環境対策を強化していくための取り組みを進めている。 (2004.7.16)



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