農業協同組合新聞 JACOM
   
特集 安全・安心な畜産物の生産基盤と販売事業の強化−JA全農の畜産事業

配合飼料でグループ全社がISO導入へ
種豚事業などで会社化が進展
畜産生産部 室屋光彦部長

 全農グループの飼料会社は、品質管理の国際規格である『ISO9001』の認証を今年度中に全工場で取得する計画だ。そうなれば米国での原料調達に始まり、それが製品になるまでの全工程にISOが導入され、安全・安心の取り組みが、より強化されることになる。また種豚の生産供給とAI(人工授精)の事業は今年4月に会社に移管され、より効率的な供給が始まった。畜産生産部門の意欲的な取り組みが続いている。

◆牛専用の飼料製造へ

室屋光彦部長
 ――BSE問題を受けた安全・安心対策として、来年4月からは、牛用の配合飼料を分離製造しなくてはいけませんが、専用工場の整備状況はいかがですか。

 「専用製造・配送体制の確立については、系統のくみあい飼料(株)全社の工事が来年2月に完成し、4月からは全国で分離製造が実現できる見込みです」

 ――鶏・豚用の配合飼料製造との明快な分離で消費者の安全・安心ニーズに応えるわけですね。例えば、昨年4月に系統4飼料会社が合併して発足したJA東日本くみあい飼料(株)では、合併前に2工場がすでに専用工場体制を完成させていました。早くから実施していた社もあったのですね。

 「順次取り組んできたわけです。それから、安全・安心という重点施策の中では、今年度中に全工場が、品質管理の国際規格である『1SO9001』の認証を取得する計画です」

 ――品質管理体制をさらに強化するわけですね。


◆地域密着の推進を展開

 「全農の配合飼料供給の流れに少し触れますと、主要な原料は米国から調達しています。米国には系統の穀物集荷会社・CGBがあり、船積みは全農グレイン(株)が受け持ち、国内受け入れは全農サイロ(株)となりますが、この3社はすでにISOを導入しています。こうした流れで飼料各社に原料が届きます」
 「これを受ける系統の飼料工場は31ですが、平成15年度末ですでに21工場がISOを導入し、今年度上期でさらに7工場が導入する予定となっています。そこで今年度は全工場での導入を進め、最終製造段階へと品質管理体制を一貫させ、レベルを向上させる計画です」

 ――事業競争力の強化につながる計画ですね。ところで、先ほど、東日本くみあい飼料の例を挙げましたが、「地域別飼料会社の全国展開」という重点施策を少し、ご説明下さい。

 「これまでの飼料会社は全農からの受託加工をする会社でした。製品の推進は全農と経済連がしていました。新しい地域別飼料会社は製造と営業推進の一貫体制をとり、事業を合理化します。そして地域に密着したきめ細かな推進でシェアを拡大し、その結果としてのメリットを価格に反映させていきます。そういう新しい形の会社を全国に展開していくということです」


◆事業競争力強化進む

 ――新しい会社が供給エリア内に、いくつかの営業所を設けているのは、競争力強化という方針の具体化ですね。各JAへ推進に回るのは飼料会社の営業活動ということになりますか。

 「つまり、全農の全国本部と各都府県本部の配合飼料事業を地域別飼料会社に移管したわけです。機能の集約化です」

 ――そういう会社は現在いくつですか。

 「6社できました」

 ――配合飼料の取扱数量は15年度が744万トン(シェア30.7%)の計画でした。実績はどうでしたか。

 「747万トンとなり、過去3年間連続して前年実績をクリアしています。16年度は752万トン(シェア31%)を掲げています。ちなみに、17年度は760万トン(同31.4%)で毎年8万トンずつ上積みし、シェアを上げていく計画です。

◆クリニック事業拡大

 ――地域別飼料会社の営業部門と連携した地域密着型の推進が数量拡大に寄与しているといえますね。

 「それと、安全・安心の施策とか、いろいろな取り組みで拡大を進めます」

 ――事業拡大には新商品の開発も必要です。

 「そうですね。当面は豚用ミルクのリニューアルがあり、10月から供給を始めます。従来は発育段階を3つに区切って、その段階に合うミルクを供給していましたが、それを4段階に増やして発育効果をさらに高めるための新商品です」
 「それから牛の代用乳を牛専用施設で製造し、来年4月から供給します。今、科学飼料研究所で新工場を建設中です。豚用人工乳との分離製造となり、新しい製造法でつくります」

 ――単味飼料の取扱数量の実績はどうですか。

 「これは残念ながら計画を1%下回ったので、16年度も再度142万トンに挑戦することになりました」

 ――さて、クリニック事業のほうはどうですか。

 「家畜疾病がいろいろな形で出てきていますから、この事業は、畜産物の安全性確保と、農場の衛生管理のために極めて重要です。全農の家畜衛生研究所の機能をさらに充実させます」

◆SPF豚百万頭へ

 「15年度は18万検体を検査する計画でしたが、実績は19万2000検体と利用が急速に増えているため検査体制をより強化し、17年度には20万検体を計画して要望に応えていきます」

 ――検体というのは何ですか。

 「血液やふん、畜産物など、健康と衛生に関わるものを家衛研で検査しています」

 ――次に、生産基盤の拡充について、種豚生産供給事業はどうですか。

 「この事業とAI(人工授精)の事業は競争力強化をはかって4月に全農畜産サービス(株)(全農畜産施設サービスから社名変更)に移管しました」
 「こうした中で、国産豚肉のシェア向上をねらったハイコープSPF豚(清浄豚)の生産は15年度が81万頭と計画を達成し、16年度は86万4000頭、そして17年度は100万頭の大台乗せを目指しています」
 「AI事業では昨年10月に西日本に第2AIセンターを設置し、全国に計3ヵ所となりました。これで人工授精用の希釈精液の供給能力が高まって、需要増加に応えることができます。希釈精液の供給実績は15年度が約27万ドースで計画をクリアし、17年度の目標はは28万ドースです」

◆ET事業の活用増える

 「種豚の生産・供給事業は会社移管しましたが、系統造成は全農が行っています。4月には新たに種豚開発センター(北海道上士幌)をつくって、雄系デュロックの系統造成を開始しました」

 ――では今度は牛のET(受精卵移植)について。

 「ET事業も拡大しています。15年度実績は6250卵、そしてET妊娠牛は1178頭となり、ともに計画をオーバーしました。16年度は7000卵と1140頭を目指します。頭数は着実にやっていこうという目標です」
 「肉質や増体性のよい優れた和牛の受精卵を乳牛の雌牛(借り腹牛)の子宮に移植して分娩させれば、搾乳もできますから、肉牛の肥育農家だけでなく、酪農家にとってもET利用は有利です。そこで「酪農・肉牛地域一環生産事業」の定着と拡大のためにもET事業の拡大を進めています」
 「受精卵とET妊娠牛を活用して、生産基盤の造成をはかっているということになるわけです」
 「普通、牛は1年に1頭しか出産できませんが、借り腹牛を利用すれば、和牛を多く生産することができます。また全農のET技術は移植卵の着床率が高いことを誇っています」


◆自給飼料の増産を促進

 ――最後に、飼料原料関係の重点施策について、お話下さい

 「最初に申し上げた海外関連会社からの一貫した物流によって、NON―GMO・PHFとうもろこし、NON―GMO・IP大豆粕など特徴飼料原料の取り扱いを拡大します」
 「またSBS(輸入品の売買同時入札)麦、ヘイキューブ・アルファルファなどの輸入飼料、くみあい飼料作物種子(輸入種子)の取り扱いも拡大します」

 ――自給飼料についてはいかがですか。

 「国の助成事業を活用した国産稲わらなどの自給飼料の増産促進と飼料作物の作付面積拡大に取り組んでいきます。そのために飼料作物の優良種子の供給に努めます」

(2004.7.16)



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