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特集 カントリーエレベーター品質事故防止強化月間 |
良質で均質な米を消費者に供給する重要な施設 ―地域農業を支えるCEの役割― 廣瀬竹造 全国農協カントリーエレベーター協議会会長(JA滋賀県中央会会長)に聞く |
インタビュアー:(財)農業倉庫受寄物損害補償基金指導部長 古村勝一氏 |
廣瀬 JAグループは7月15日のJA全中理事会で「新たな食料・農業・農村基本法の策定に向けたJAグループの政策提言」を決定しています。そのなかで、国際化の影響を大きく受ける水田農業については、集落営農あるいは受託組織など、いまは組織的に不十分でも将来に向かってやろうという意欲的な組織も含めて、地域ごとにそれぞれの実態に合った担い手づくりを取り組み対象にすべきではないかとしています。 ――米は直接支払いの対象にはならないようですね。 廣瀬 そうなれば、大変なことになりますね。滋賀県の場合は県独自で、環境こだわり米についてはわずかですが直接払いをしています。
廣瀬 いま国が考えているように本当に農業にプラスになるのかといえば、現場で考える限り、集落と共存できる農業が展開されなければ、現場で混乱が起きると思いますね。畜産とかは株式会社でもできるとは思いますが、土地利用型農業は地域との共存とか環境の問題がありますから、企業が経営規模を拡大してコストを下げたような農業をしても、地域と摩擦が起きるなど、難しい問題が生じてくると思いますね。 ――意欲的な専業農家と集落の共存が望ましいということですね。 廣瀬 土地利用型農業では、環境保全とか集落における共同作業的な面からみても、それが望ましいですね。そこに企業が参入してもうまくいかないのではないでしょうか。
――米政策改革の実践、改正食糧法の施行など、米麦をめぐる環境がめまぐるしく変化し「売れる米づくり」がいわれていますが、滋賀県ではどのように取り組んでおられますか。聞くところによると、JAの施肥基準と栽培指針を厳守した「プリップリ米」に取り組まれているということですが。 廣瀬 滋賀県の場合には一時期、等級比率が悪かったんですね。これはコシヒカリ・キヌヒカリという早生品種の田植え時期が5月の初旬に集中したために、夏の高温で乳白米が生じたこと。そして成育障害で身が細かったためです。 ――「プリップリ米」の基準は…。 廣瀬 仕上げ水分14.5%、タンパク6.5%以下、整粒歩合80以上の良質米ですね。 ――「環境に配慮した米づくり」というのもありますね。 廣瀬 これは県が、琵琶湖の汚濁防止のために、代掻きと化学農薬をできるだけひかえて水質の窒素質を抑えたいということで基準を示しています。この基準で生産すると10アール当たり、3haまで5000円、3ha以上2500円の助成をするという協定を生産者が結んで行っています。その面積は16年産米で2300haです。そして県が制定した「環境こだわり農産物」の認証マークを貼って販売しています。
――食に対する安全・安心志向が高まり、米についてもトレーサビリティなどの対応が求められていますが、CEではこれにどう対応すべきだとお考えですか。 廣瀬 均質な米を提供していくためにCEを利用していますが、今後は安全・安心のために栽培基準を示し、その基準で生産されたものをCEに出荷をしてもらう。つまり、いままでは何でも出荷していたわけですが、これからは栽培履歴を記帳してもらい栽培基準を守ったものをCEに入れていくことに変わりつつあります。そうしたことを通じて、それぞれの地域、CEが特色ある米づくりに取り組まれていると思います。 ――「こだわり米」とか別々に管理するためですね。 廣瀬 そういうことです。いままでは、生産者の作付け体系が3〜5あり、品種が分散していますが、これからは、生産履歴やコンタミ問題がありますから、品種をできるだけ抑えて、2品種くらいにし、CEも、CEごとに当面は2品種、将来は1品種に受け入れる品種を絞らないといけないのではないかと思いますね。 ――それはコンタミ問題への対応ですか。 廣瀬 最近は、生産段階まで遡ってコンタミ問題がいわれますね。生産者の段階では、複数品種生産している場合、コンバインの清掃ができるかという問題がありますね。さらに、CEにおいては乾燥・調製の各段階で残留米が出る可能性があります。各段階でいくら清掃してもコンタミする可能性があるわけです。 ――コンタミ問題は、種子管理からコンバイン、CEに入ってからの乾燥調製まで、いろいろな段階があるので「1粒たりとも」というのは難しいですね。 廣瀬 生産者は美味しいものをつくって消費者に届けたいと思っているわけで、コンタミという流通段階での混米と生産者段階の問題は本質的に違うと思いますね。
廣瀬 CEは生産者の負担軽減と消費者に均質な米を届けるということで普及し、現在の処理能力は200万トンを超えましたし、数としてはいいところにきていると思います。
――全国的に見ると昭和60年以前の設置CEが約280基あり老朽化してきていますね。これも問題点ではないでしょうか。 廣瀬 いままでは米流通の近代化にとってCEは大きな役割を果たしてきました。これからのCEは、安全・安心で大量・均質な米を供給し、そのことで地域の農業を支えていく重要な施設だと思います。 ――最後に全国の会員さんへのメッセージを…。 廣瀬 いまの農業情勢をみるとCEの必要性と重要性がますます高まってきていると思います。グローバル化し米価が下がる時代こそ、いかに良質で均質なものをコストを抑えて消費者に供給する役割が重要になってくると思いますので、その期待に応える運営をしていただければ、社会的にもCEの評価が高まると思います。
(2004.8.23)
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