◆貯蔵能力200万トン超地域農業振興の核に
カントリーエレベーター(CE)は、昭和39年に「米麦生産流通合理化モデルプラント設置運営事業」として、初めて石川県吉田農協(現JA能美)を含めて3基建設された。
当時は、いわゆる稲作の機械化一貫体系の実現に向けて動き出していた時期で、乗用トラクターや田植え機の開発・普及が本格化し、さらに自脱型コンバインの普及へと進み、こうした動きにあわせてCEの建設も進んでいったといえる。
CEの普及は、導入後、10年も経たない昭和47年に100基を突破し、15年後の54年には202基、61年に300基の大台を超える。そして、平成元年には400基・貯蔵能力100万トンとなり、導入後30年経った平成6年には560基・140万トン、導入40年後の現在では770基、貯蔵能力200万トンを超えるまでに普及し、米麦の生産・販売流通の基幹施設として揺るぎない地位を築いたといえる。
CEが普及してきた要因は、国の強力な指導のもと、これに応えCEを地域農業振興の核にするというJA経営陣の熱意と努力、そして、施設メーカーの日本にCEを根づかせようとする努力と協力、などがあげられる。とくに、CEに対する国の補助事業は、昭和39年以来、絶えることなく続けられ、CEの発展・定着に大きく寄与してきたといえる。
◆国の援助も得て品質事故補償制度を確立
昭和47年4月、全国のCE設置主要8県を中心に「全国CE設置農協連絡会議」が発足する。この「連絡会議」の主要テーマは、(1)CEに関する政策要求、(2)CE処理米の代表者売渡し制度、(3)品質事故共助制度だった。とくに、品質事故共助制度は、これまでにいくつかのCEで品質事故が発生し、その損害額も大きく、施設運営に深刻な影響を与えるため、CE設置JAの関心がもっとも高い課題だった。そして48年9月に品質事故共助制度がスタートする。
この討議のなかで、▼共助制度は設置JAだけの努力では限界があるので、国に財政的援助を要請すべき▼ゆるやかな組織である「連絡会議」を改組してもっとしっかりした組織体制をつくるべき、という意見が出された。そして、品質事故の共助制度をさらに充実させるための組織体制強化の観点から、49年6月25日に「全国農協CE協議会」の設立総会が開催された。
初代会長には、CE建設第1号の石川県吉田農協(現JA能美)の安田会長が就任する。安田会長は「施設を持つ者は、いつも火山の噴火口の上に寝ているようなものだ」と語り、CEへの愛着と事故への危機感から、補償制度の確立に心血を注ぎ、以来10数年間会長職務に精力的に取り組んでいく。
協議会は直ちに品質事故補償制度確立に向けて、財源確保の検討に入る。そして、CE設置JAからの拠出1億円、設置JAをもつ県連および全農からの供出1億円、計2億円を準備する。これを基礎に国への助成要請活動を行い、50年2月、旧食糧庁予算から2億5000万円の助成を得る。これで、(財)農倉基金に、火災・水害の事故補償に次ぐ第3の補償制度が50年7月に誕生する。さらに62年に麦の品質事故補償が、平成16年からは小麦のDON品質事故補償が加わっている。
◆優秀CEやオペレーターの表彰、研修も充実
協議会は、品質事故防止対策の一貫として、オペレーター研修会、経営者・管理者研修会などを開催しているが、平成4年産米が収穫時期の異常気象により、CEの品質事故が多発したこともあり、県連CE指導員制度を設置し、指導員が県内CE巡回を行うなど事故防止に努め、一定の成果をあげてきた。さらに13年には、農倉基金の技術参与4名による全国CE個別巡回指導制度をつくり、各CEの操作・運営診断やオペレーター・施設管理者・経営者と懇談し、品質事故の事前予防を推進。15年産は米麦とも品質事故ゼロを実現した。
昭和57年には、CE技術表彰制度が発足し、多数のグループや個人から優れた考案が応募され、CEの技術開発・改良に大きく貢献した。この制度は平成6年まで続くが、8年からは各CEで活躍する優秀オペレーターの表彰制度に代わり今日に至っている。平成元年には、農水省の後援を得て、優良CEの表彰制度(5年に1度)を設け、今年は第4回目の表彰が行なわれる。6年度(第2回)から表彰CEを対象に、米国や豪州のCEや物流施設などの視察研修も実施している。
◆CEは食品工場という意識
また、CEは食品工場という意識のもとに、県レベルでCEの運営管理・環境整備コンクールが、福岡・福井・山形庄内で先行実施され、その後、滋賀・新潟・香川などでも取り組まれているが、13年から協議会も後援することにしている。
協議会は、品質事故の防止と補償や稼働率向上など施設運営の改善向上をはかることを目的に発足し30周年を迎えた。現在、CEをめぐる課題としては、老朽化施設・設備の更新や複数施設の再編整備、稼働率向上と品質事故防止、トレーサビリティやコンタミ防止をはじめとした米麦の品質管理の強化などがあげられる。これらの課題解決に向けて、協議会がさらに積極的に対応・努力するところに、今日における存在意義があるといえる。
JA米の太宗を担う施設に―協議会発足30周年を迎えて
廣瀬竹造 全国農協カントリーエレベーター協議会会長
今年は、昭和49年6月25日に全国農協カントリーエレベーター協議会が発足してから満30周年を迎えました。発足当時は、わが国にモデルプラント事業として、カントリーエレベーター(CE)が導入されてから10年目で、97の会員JA(123施設)でスタートしました。
当時の最大の課題は、設置JAの経営を揺るがしかねない深刻な問題である品質事故の補償制度の確立でした。このため、協議会は会員JA・県連とともに強力な要請活動をすすめ、50年に国から2億5000万円の予算を獲得。設置JA、県連、全農の拠出を加えて、今日の補償財源の基礎を確立しました。
CEにおける米麦の品質事故は、農倉基金による個別巡回指導もあり、最近、ようやく下火になったものの、平成に入ってからでも70数件の事故が発生し、16億円の補償を行なっています。品質事故を一度起こすと、莫大な損害額はもとより、生産者の信頼、米麦需要者の信用を損ねますので、会員JAには、くれぐれも事故防止に万全な注意をはらわれるようお願いします。
さて、CEは国の手厚い指導のもとに、今日では、全国309JAで設置され施設数も770余りとなり、処理(貯蔵)能力は200万トンを超えるまでに発展しました。いまや、地域農業再生および米麦作経営の基幹施設として、さらには、米麦生産・販売流通の拠点施設として、生産・消費の両方に揺るぎのない地位を築いています。
現在、生産現場では、「米政策改革」を受け、「売れる米づくり」や「JA米」への取り組みがすすめられていますが、トレーサビリティをはじめとした「食の安全・安心」問題への対応や、コンタミ・異物混入防止など米麦品質管理の強化など、CEの果たすべき役割と機能が一段と求められています。これに加えて、大幅な減反政策などによる利用率の低迷、JAの広域合併等に伴い老朽化施設・設備の更新問題や複数施設の再編整備などの課題も抱えています。
協議会は、これらCEに求められる役割と期待、諸課題解決に積極的に対応し、CEが文字通り地域農業再生の核、そして、安全・安心をコンセプトとした「JA米」の太宗を担う施設として活躍するよう最大限の支援をしていきたいと考えています。
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JA筑前あさくらが農水大臣賞を受賞−優良CE表彰
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JA筑前あさくら(福岡県)のCE |
優良CE表彰は、平成元年から5年に1度実施されており、今年は第4回目となる。
今年の表彰CEは別掲の11CEで、農林水産大臣賞は、福岡県・JA筑前あさくら(上村勝組合長)の平成CE(福岡県朝倉郡夜須町)が受賞した。
平成CEは平成2年に設置され、貯蔵能力は米2400トン、小麦720トン、大麦600トンと米麦併用施設だ。JA筑前あさくらは、地域水田農業ビジョン策定に積極的に取り組んでいるが、地域農業の担い手である水田営農実践組合の中核となる施設として同CEは位置づけられている。
同CEでは、集出荷、品質向上、物流合理化の取り組みとして、麦類・酒米についてはCEのみの一元集荷で物流の合理化を実施(個体集荷は認めない)。さらに、玄米色彩選別機を導入し、米麦への異種・異物混入を防止。また、生産履歴記帳・種子更新100%を実施して、品質向上に努めるなど、食の安全・安心に積極的に取り組んでいる。
また、福岡県で開催しているCE運営管理・環境整備コンクールでは4年連続で表彰を受け、15年度の福岡県優秀オペレーター表彰では、主任オペレーターが受賞するなど、県内はもとより全国でも模範となる優秀なCEだ。
◆優良農協CE表彰 受賞CE
●農林水産大臣賞
JA筑前あさくら・平成CE(福岡)
●農水省生産局長賞
JA北いぶき・沼田町米穀低温貯蔵乾燥調製施設(北海道)
JAいしのまき・桃生CE(宮城)
●全農理事長賞
JA鶴岡市・西郷CE(庄内)
JA西美濃・海津CE(岐阜)
JA佐城・三日月北部地区CE(佐賀)
●農倉基金理事長賞
JA大北・大北CE(長野)
JAグリーン近江・大中の湖CE(滋賀)
●全国農協CE協議会長賞
JA秋田おばこ・田沢湖町CE(秋田)
JA松任市・北星CE(石川)
JA花咲ふくい・丸岡東部CE(福井)
(2004.11.10)