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福岡で第31回大会を開催 業績賞に研究と技術で3題
《日本農薬学会》

業績賞(技術)の発表(上) 受賞のお礼を述べる津幡氏(下)
業績賞(技術)の発表(上)
受賞のお礼を述べる津幡氏(下)
 日本農薬学会第31回大会が3月21日〜23日の3日間、福岡市東区の福岡工業大学で開催された。初日は、総会および日本農薬学会賞授賞式・講演、特別講演が、さらに、22日〜23日には環境調和型農薬や農薬バイオサイエンス関連でシンポジウムが行われている。
 1975(昭和50)年に設立された日本農薬学会は、作物保護や農薬をめぐる諸問題を考え研究する人々の団体。この分野の各種中継基地も目指している。正会員および学生会員などにより構成され、2005(平成17年)末現在の会員数は約1500人。
 平成18年度日本農薬学会賞には、研究と技術で3題が選ばれた。
 業績賞(研究)は『昆虫行動制御物質に関する研究』(東京農工大学:安藤哲氏)、業績賞(技術)には『殺虫剤クロマフェノジドの開発』(日本化薬:柳幹夫・渡部哲夫、三共アグロ:塚本芳久・川岸秋義の4氏)および『抵抗性誘導型殺菌剤チアジニルの開発』(日本農薬:津幡健治・黒田潔・山本好伸・八十川伯朗の4氏)が受賞した。
 特別講演は、『殺虫剤の化学構造と神経作用』(西村頸一郎氏)、『複合・複雑系解析のためのバイオインフォマティクス』(岡本正宏氏)の2題で行われた。
 また、シンポジウムは、『環境調和型農薬を目指して−世界の動向と環境負荷低減に向けて−』および『農薬バイオサイエンスのフロンティア』の2タイトルで行われた。特に、前者では「ピレスロイド系家庭用殺虫剤の製法研究」、後者では「バイオフォトン検出装置の開発」などが注目された。

 【平成18年日本農薬学会賞の概要】
 〈業績賞・研究〉『昆虫行動制御物質に関する研究』 昆虫の行動を制御し作物などの被害を防ぐ代表例としてフェロモン利用があり、これまで10科・30種ほどのガ類昆虫から性フェロモンの構造決定が行われている。エポキシ系フェロモンは大量合成が難しく開発が遅れていたが、世界初の例としてヨモギエダシャクの撹乱剤開発に成功した。フェロモン研究とは別に、植物成分中に含まれる昆虫忌避物質なども興味深い研究対象だ。
 〈業績賞・技術〉『殺虫剤クロマフェノジドの開発』 クロマフェノジドは日本化薬と三共(現・三共アグロ)との共同研究の成果として、2000年にマトリックの商品名で上市し、IPM(総合害虫防除)基幹剤の1つとして位置づけられる。安全性に優れ、国内ではイネ、だいず、野菜、果樹、茶など幅広い適用がある。昆虫ホルモンのエクダイソン骨格を有しないジベンゾイルヒドラジン化合物に、エクダイソン様活性があることを示す学術論文を発端に合成展開を行い、鱗翅目害虫に極めて高い活性を示すクロマフェノジドを見出した。現在、海外13カ国で登録があり、多数の国で登録申請中。
 〈業績賞・技術〉『抵抗性誘導型殺菌剤チアジニルの開発』 チアジニルは、2003年に日本農薬が上市した抵抗性誘導型新規イネいもち病防除剤「ブイゲット」(商品名)であり、育苗箱施用および本田水面施用において優れたいもち病防除効果を発揮する。研究の端緒は、合成中間体としてのヒドラゾン誘導体の活用であった。その中で、5−カルボン酸誘導体が特異的にいもち病に対して高い水面施用活性を示すことを見出した。最適化を行い、育苗箱施用ならびに本田施用での効果、安全性、製造コストなどを総合的に考慮し、チアジニルを選抜し開発した。

(2006.3.29)


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