バイエル クロップサイエンス社(ドイツ・モンハイム、以下「BCS」)はこのほど、United Phosphorous Limited社(インド・ムンバイ、以下「UPL」)に除草剤および殺虫剤2剤を売却した。利益品目へのシフトで経営体質をより強化する。
今回の売却対象農薬は、浸透性カーバメート系除草剤の有効成分アシュラム(商品名:Asulox、アージラン)および有効成分トリクロルホン(同:ディプテレックス)など殺虫剤2剤。なお、BCSは戦略的市場における非農業用用途については当分の間販売権利を保有する。売却額は約4350万ユーロ(約65億円)。
BCSにとって今回の製品売却は利益性の高い製品に集中し、ポートフォリオ(製品構成)の最適化を進める同社の戦略に沿ったもの。一方、UPLにとっては顧客に幅広いソリューション(問題解決)を提供するための世界的な製品ポートフォリオの強化戦略につながる。
UPLはインド最大の農薬会社であり、業界においてマクテシム・アガン(イスラエル)、ニューファム(オーストラリア)、ケミノバ(デンマーク)につづく世界トップ4のジェネリック会社に数えられる。2006年3月末の売上高は4億8000万米ドル(約567億円)。ちなみに、第5位はオクソン(イタリア)。
【解説】このところ、ジェネリック(特許切れ)農薬会社の成長・躍進が際だっている。マクテシム・アガンはブラジル2社の買収以降成長路線に入り、いまや業界トップに躍りでている。全世界農薬産業の中でも第7位にランキングされている(グラフ)。これを追随するUPLの動きも極めて俊敏だ。
今回の売却は、BCSにとっては利益品目にシフトするという戦略の既定路線のうちにある。UPLにとっては成長戦略にいっそう弾みがつくことになると思える。問題は、「3兆円強といわれる世界農薬市場のうち、将来的にジェネリックが70%以上を占める」(有識者)という現実が指摘されていることだ。
各社のR&D(研究開発)費への投資が憂慮されるが、有効成分の同等性など安全対策が置き去りにされてはならない。
あえて今回の売却では、UPLの日本法人である三井物産系のユーピーエルジャパン(株)のディプテレックスにおける流通戦略が注目される。
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