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「ゴク」ろうさま。操縦についつい力が入る。 農林水産大臣賞に輝いた和気さん(右)と山本さん(左) |
(社)農林水産航空協会(以下「農水協」)と全国産業用無人ヘリコプター推進協議会(以下「全推協」)主催による『第15回全国産業用無人ヘリコプター飛行技術競技大会』が11月3日、茨城県水戸市の農林水産省農業技術研修館圃場で行われた。
参加資格は、薬剤散布を累計20ha以上実施したオペレーターであることや地域・都道府県の推薦を受けた者となっている。本年度は、26道県から県推協などの予選会を勝ち抜いたオペレーターと合図マンの108ペアがエントリーし、日頃の技術を競い合った。
競技内容は80mの距離設定のもと、飛行速度15km/時、飛行高度3m、飛行間隔7.5mで6コースを飛行するというもの。3600満点で、評点は減点方式。栄えある農林水産大臣賞に輝いたのは、栃木県・塩谷地方農業共済組合の和気守義さんと山本伸寿さんペアで、3552.96点だった。
同組合は5機体を保有し、2氏とも3年間で約1000haの薬剤散布経験をもつ。「一定した飛行速度が受賞の対象になったと思う。合図マンの好リードで落ち着いて競技に臨めた。ドリフト(飛散)防止に向け高度、速度などに十二分に注意したい」と和気さん。そのためにも、「現場での情報交換がいっそう重要になる」(同)と語っている。
【各賞受賞者】
◇農林水産大臣賞:和気守義・山本伸寿(栃木県)
◇農林水産省消費・安全局長賞:増田光生・仲松浩幸(静岡県)、江口成次・川崎富雄(佐賀県)、熊谷達郎・小関健史(山形県)、粂谷一郎・片庭久雄(栃木県)、山野英子・木村浩二(茨城県)
◇農水協会長賞:今井明浩・大林覚(滋賀県)、磯田三好・熊谷道久(福岡県)、藤塚良則・藤塚正一(新潟県)、加藤日出雄・磯部佳佑(愛知県)、菅原久美子・高橋徳一(秋田県)、高村智子・木原美樹(山口県)
◇全推協会長賞:大林覚・今井明浩(滋賀県)、河野公明・田中利浩(熊本県)、高橋翔・千葉清博(秋田県)、磯部佳佑・加藤日出雄(愛知県)、細川裕子・山田育朗(秋田県)
◇特別賞(第15回大会記念、道県対抗):1位佐賀県、2位秋田県、3位滋賀県
【解説】
平成18年度無人ヘリによる薬剤散布面積は約80万haとなっている(10月末)。水稲69万ha(86%)を中心に麦、大豆、大豆・小豆、松、その他野菜と、その用途は広い。
また、機体数、オペレーター数も、それぞれ約2200機、1万2000人と着実に増加している(8月末・表)。散布場面においてより高い安全性が求められていることから、薬剤散布面積が2004年には従来の有人ヘリから無人ヘリに逆転した。地域別には、穀倉地帯をひかえる東北32%をトップに、九州15%、北海道14%、北陸13%と続いている(グラフ)。
今年のテーマの1つは、何といっても5月29日に導入されたポジティブリスト制度に関わるドリフト(飛散)への対応だった。
「無人ヘリでは、同じ有効成分なのに剤型によって使用できるものとそうでないものがある。現場と製剤メーカーの意思の疎通をもっとはかる必要がある」(埼玉スカイテック・森戸政己さん)とポジティブにやや戸惑いを見せるものの、「現場の実状に即した技術対応を実践したい」(同)と頼もしい。
また、「細かい所まで作付けしている作物を、薬剤散布前に確認」(山口県・秋穂(あいお)防除組合・高村智子さん)しており、現場での緻密な対応の重要性をうかがわせた。
一方、無人ヘリによる薬剤散布は広域な一斉防除が可能であることから担い手対応の一環としても期待されている。「農業者の高齢化の中で規模拡大が進みつつあり、防除の手助けをやっていきたい」(森戸さん)と意欲を見せる。
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