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挨拶する中西理事長 |
(財)雑賀技術研究所(和歌山市・中西豊理事長)は、残留農薬の新分析方法「SAIKA(II )法」を開発し、2月5日より残留農薬個別分析サービス「わんでい」をスタートさせた。それに先立ち、同財団では1月30日、雑賀技術研究所本部において、「残留農薬分析に関する新規事業の記者発表会」を開催した。
(財)雑賀技術研究所は、雑賀慶二会長の保持する工業所有権の寄付を基に昭和38年に設立された。以来、『技術・開発部門』、『食品化学部門』、『環境システム部門』、『振興事業部門』の4事業分野を擁し、スタッフ40名余が、それぞれの分野で顕著な成果をあげている。
米の食味測定装置「味度メーター」や、近赤外線分光分析法による非破壊糖度・酸度測定装置「シトラスセンサー」の開発、国内初となる「残留農薬多成分一斉分析方法」の開発などをはじめ、発明奨励、人材育成などの科学技術振興に取り組んでいる。
ちなみに「シトラスセンサー」は、国内で500台ほど導入されており、昨年は米国カリフォルニア州に、柑橘の糖・酸度検査用として、15台が輸出されたという。また平成15年に同技研が開発した、大量の試料を安定的に注入できる胃袋型ガラス製の注入口「ラヴィストマ」を取り付けたガスクロマトグラフは「ラヴィストマLVI-S200」として商品化され、残留農薬などの分析用に厚労省神戸検疫所へ10数台導入されている。
記者発表会では、冒頭の挨拶で、(財)雑賀技術研究所の中西豊理事長が、同技研の沿革・事業概要と残留農薬個別分析サービス「わんでい」の概要を説明した。続いて同技研食品化学部の小畑雅一氏が、残留農薬の分析方法「SAIKA(II
)法」の技術的なポイントを説明した。
現在の残留農薬分析では、「単品分析」と「多成分一斉分析」が使い分けられているが、多成分一斉分析法は、ポジティブリスト制度では、初めて公定法に取り入れられるなど、近年目覚しく普及が進んでいる。
単品分析で数百種類の残留農薬を調べるには、膨大な時間と費用がかかるので、この分析法は、少数の農薬項目に限定して検査する「個別分析」に用いられている。厚生労働省の登録検査機関などの公的機関での検査では、この手法が用いられている。
同技研では、平成10年に独自の多成分一斉分析法「SAIKA法」を開発し、一般からの依頼分析を受託してきたが、現在では、445農薬の検査が可能になっている。ただし、農薬残留値の精度と信頼性を維持するには、高度な技術とノウハウ、厳格な精度管理システムが必要となる。
同技研では、平成16年に試験所認定の国際規格であるISO17025を、独自開発した残留農薬多成分一斉分析法で取得している。ISO17025はISO9001の品質マネジメントシステムに加え、試験所の技術能力も審査・認定の対象となり、この分野(残留農薬)では、日本で初めての取得となる。このJAB((財)日本適合性認定協会)の認定をはじめ、CSL(英国の政府系機関)の試験にも過去10回以上参加し、全て合格している。
新分析法「SAIKA(II )法」の大きな特徴は、1.抽出、濾過、精製、脱水の工程を簡略化した新前処理法(特許未出願のため非公開)、2.新型固相抽出カートリッジ「SAIKA-SPEミニカートリッジ」(世界特許出願済み)の採用、3.GC大量注入口装置「ラヴィストマLVI-S200」(米英特許登録済み)の3件の新技術を採用したことだ。
「SAIKA(II )法」を使った残留農薬個別分析サービス「わんでい」は、○445農薬中、1農薬から選択できる。
著名な登録検査機関で、5農薬の残留分析を行うと、費用は12万6000円〜14万7000円、納期で17〜20日ほどかかるが、「わんでい」では、5農薬で7万3500円。納期は1日。文字通り「わんでい」である。高精度の分析と低料金、短納期を実現した残留農薬分析サービス「わんでい」は、食べ物の生産から加工販売まで、広い業態で注目されるだろう。「わんでい」に関する問合せは(財)雑賀技術研究所 TEL073-474-0860まで。
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(左)小畑部長代理が技術概要を解説・(右)前処理作業をするスタッフ |
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