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岩本毅理事長 |
(社)日本植物防疫協会(岩本毅理事長、本部:東京都豊島区)はこのほど、東京都北区の滝野川会館において『防除の指導・実施体制を考える』でシンポジウムを開催した。農水省、各県農林水産部・試験場・防除指導者・防除業者、JA全農、大学、農薬工業会会員など、約400名強が参加した。
IPM(総合的病害虫・雑草管理)など的確な防除を広く普及・推進するためには、優れた指導体制と防除の担い手の確保が重要な課題となっている。
しかし、既往の指導機関が縮小傾向にある中で、専門知識を有する指導者を養成していくことは容易ではなく、生産者の高齢化や共同防除組織の崩壊などによって防除の実施基盤も弱体化しつつある。
本シンポジウムでは、今後とも必要な防除を適時的確に実施していくために何が必要なのかを考えた。
病害虫防除を取り巻く環境を見ると、わが国は温暖多雨・多湿な気候条件にある。このため、他の先進国に比べて病害虫の種類と量が多い。また、特殊な環境と周年栽培から病害虫が多発しやすい。さらに、見栄えの良くない農産物は消費者から敬遠されがちだ。
一方で、病害虫・雑草による減収と出荷金額への影響には甚大なものがある。減収率・出荷金額の平均減益率を見ると、りんご97%・99%、キャベツ69%・70%、きゅうり61%・60%において高い位置にある(参考1)。
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シンポジウムの会場から
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病害虫防除対策の見直しとして、適時的確な防除を行っていくには、発生予察も重要視される。シミュレーションモデルなどを用いた病害虫発生予察も進んでおり、新技術の開発・導入が進んでいるが、対象病害虫の見直しなどが課題となっている(参考2)。地域に密着した病害虫指導を行っていくには、産地・地域における連携が必要だ。
消費者の食の安全・安心への関心が高まる中で、IMPなどへの展開も枠を広げつつあるが、現在、薬効・薬害試験の民間開放や作物残留性試験に係わるGLPの導入などを柱とした農薬登録制度に関する検討も進められており、植物防疫事業も大きな転換期に来ていると思える。
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