ヨーロッパ口蹄疫にひとこと
ヨーロッパ・ツアーから帰国した知人曰く、「日本は良い。牛肉・豚肉が食える。フランスでは肉と言えば、鶏肉ばかりが出る。毎日、鶏、とりでもう、うんざりだった」。そこで、インターネットを通じて現地の口蹄疫騒動を覗いてみた。以下要約である。
《英国政府は間違っていると農家は言う》
家畜に口蹄疫が見つかった最初の頃、英国政府は国民にカントリー・サイドには立ち入らないように警告した。これが観光産業に大打撃となり、英国民の猛反対を食らった。最終的には観光客の農村への立ち入りを政府は許可したのだが、もう元には戻らない。また、政府は口蹄疫が流行し出した時、病気の発生した農家を限定して、その農家の飼育している全ての家畜を屠殺すれば、病気の流行は止まると思った。しかし、世論は厳しく、ひつじと豚だけが殺された。
デーボン市は、北部にあり緑豊かな英国では第2番目の畜産業地帯である。この地区での口蹄疫の発生は156農家で起きたのに、1000戸の農家の家畜全部が殺された。ある農家(51歳)は、「屠殺役人がやって来て、飼育していた215頭の病気でもない牛が自分の農場で殺されるのを看取った。牛の死体は農場に放置されたまま12日間もおかれ、それが腐敗し、家の中まで悪臭が漂った。恐ろしい光景だった」。
「屠殺政策は政治的だ。何十万頭という健康な家畜まで見境なく殺している。そうすれば、疫病の流行は終わる。6月には選挙があるからだ」と不満を述べる。またある農家(37歳)は、1000頭の羊と400頭の肉牛が殺された。どれも病気ではなかった。疫病発生の農家と土地が続いているという理由だけで殺され、距離的に近くても土地が途切れているので屠殺を免れた農家もある。
3月20日から4月20日までの1カ月間にこの地域では950軒の農家査察訪問が政府役人によって行われた。政府の方針を批判する獣医には、今後政府関係の仕事を回さないとの圧力もある。数週間前、ホールワース市では、15000頭の牛と羊が空き地で焼かれた。800m離れたところには市立病院、公立学校もあり、住宅地もある。発ガン物質の危険性を含む黒い煙が立ち昇り、さすがに住民の抗議に抗しきれず、4000頭を焼いたところで中止した。後の11000頭は焼却炉で処分破棄された。
ミース市の近くに35万頭の羊の死体を埋葬する穴の建設計画がある。住民は当然反対運動をしている。200頭の死体の埋めこみだって環境に悪いのに、何千何万の数ではその地域の災難だ。土壌汚染、水質汚染、硫酸ガス発生など何年か後には必ず問題が出るはずとデモ行進して建設反対運動をしている。
英国の農協連合会は、家畜の死体は海に捨てるべきだと政府に進言している。沈むのを確認出来るし、大陸層に流されていくという。専門家は口蹄疫のビールスは水の中では生きられない。まして、海水の中では死ぬだろうという。政府はまだこの提案を採用していない。英国農民の3分の1は、疫病で規模を縮小せざるを得ないと考え、6%は離農するだろうとの調査もある。いずれにしろ、日本への口蹄疫の上陸はご免こうむりたい。輸入食品の日本の検疫制度は大丈夫だろうか。 (金右衛門)
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