農協批判にひとこと
農協を愛すればこそと、武部農林水産大臣が先月5日、講演した中に、「農協は、理事会だ、総会だと言って物事に時間がかかり過ぎる。農協型民間会社になっている。事業も中継ぎ貿易をやっている。もっとフットワークを軽くすべきだ」と農協を批判した。
農水省は農協の監督官庁だが、法律ではどうなっているか。「農協は、農民の自主的組織です。農協の事業は、農民自身の意思で決定し、運営されます。農協は、事業を通じて農民の社会的、経済的地位の向上を目的とするものです。国家(行政)の指示に基づいて事業を行うのではありません。」これが農協法である。
食糧のコスト高とか、食品会社の不祥事だとか、日本農業に関して社会が騒がしくなると、行政は身代わりに農協を差し出し世間の目を、農協の方向に向けさせる傾向がある。農相が言うように農協はスローデシジョンのところも、遅れている部分もある。しかし、農協が動き出したら強いということは誰もが認めることだろう。金融の農林中金、保険の全共連、経済事業の全農、トラベルの農協観光などの全国連は、同じ業界の大銀行、保険会社、大商社、旅行業に肩を並べて遜色ない。
これらを力強く支えているのは農協である。ビジネス・モデルとして外国の大学の研究対象にもなっている。ただし、運営しているのは人である。システムは素晴らしいが、業務に携わる人間を常に教育していないと立派なりんご箱も腐る。農協の事業は公共性が強いとして、行政は、積極的に農協の監督指導に乗り出している。信用事業の検査強化、統合連合の早期実現も行政の見えざる圧力が後押ししている。
農協改革をしっかりやっていますと行政は国会答弁したいからだろう。しかし、組織、人の寄せ集めだけではダメです。農協改革の中味、効率化の意味が大切なのです。自主的でないもの、官製の押し付けでは長続きしません。農協は、農家組合員との付き合いが物を言う世界です、良い意味での馴れ合い無しでは語れません。農家へ足を運び納得の上、資材や共済を伸ばしてきました。
協同組合精神というモラルが重要でした。市場経済重視で行う顔の見えない競争社会で今後どう農協が対応していくのか。学識経験理事に頼る経営管理委員会は迅速化・透明性など時代の要請にこたえられるだろうか。大企業が見向きもしない都市郊外では、ガソリンスタンドのSS、スーパーのAコープ、冠婚葬祭、酒販、家電販売。農協には農家だけでなく兼業農家組合員にも欠くことのできないライフラインの施設と活動の場がある。地域の雇用創出に役立っている。日本の農協は潰れることもないし、潰されることもない。ガンバレニッポン。ガンバレJA。 (金右衛門)