農業協同組合新聞 JACOM
 
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コラム ―― ひとこと

冷夏にひとこと 農業への理解を基準に一票

 お盆に新潟の田舎へ帰省した。8月13日朝、新幹線の座席指定は全部売り切れ。東京駅ホーム、自由席待ちの列の後尾について15分待って座れた。まだ空席がある。お盆のような人出のピークの季節には始発駅からの自由席待ちが穴場。上野を過ぎて大宮駅に来るとさすがに座席は一杯になり立った乗客もいる。東京、新潟間は2時間、手前の長岡駅で席は空く、立った人でもせいぜい1時間か。東京の通勤電車のことを思えばさほどの苦痛でもない。前もってスケジュールを決めなくとも、思いつきで帰省、墓参で先祖も喜ぶだろう。
 今年は日本中が冷夏に見舞われた。郷里新潟は稲作地帯、3日間の滞在中雨ばかり。出穂は例年より5日遅れると農協からの知らせが各農家にあった。実際には更に2〜3日遅れて穂が顔を出した。お盆以降の天気が味覚を決める。好天が続けば、美味しいお米が取れる。東北や北海道は低温のため穂の生育が止まり、「白ふ」の現象が現れているとの報道もある。他の地域が米不足になれば、米の値段が上がってくれるのではないかというのがこの地域の農家の関心事でもある。
 この田園地帯を貫通するバイパス道路が計画されている。農地の利用交渉が進んでいるが、農家は基盤整備事業で30アール1枚の田んぼに農地が集約されたばかり。低コスト農業実現、機械を入れて農作業を効率化し、国際競争に打ち勝つためといわれた。それなのに数年を経ずして大きくした農地をバイパス道路用に一部提供しろという。農地が細切れになり、狭くなって、また以前の手作業に逆戻りする。大きな田んぼで持続可能な農業をしたい農家は、バイパス道路には興味がない。だから農地利用交渉は難航する。農地管理は農水省、道路は国土交通省、それぞれ官庁の目的が違う。この地域の基幹産業は農業と観光である。実際の調整作業は農家と地方行政官の交渉に委ねられるから当事者は悩む。
 今年の異常気象は地球規模の気流の関係で日本が冷夏なら、ヨーロッパは猛夏と報道されている。フランス、イタリア、ドイツ、スペイン等では大きな被害が出るといわれる。小麦、とうもろこし、菜種、ひまわり、飼料作物など収穫予想は前年を大幅に下回る。
 干ばつに苦しむヨーロッパ農家に対し、EUでは農家救済策を早々とまとめた。補助金を1カ月前倒しで9月に交付するという。
 日本は、自民党の総裁選挙が9月20日、民主党と自由党の合併も9月30日に予定。政局のテレビ討論がさかんに行われているが、冷夏による農業救済の政策論議はほとんど聞こえてこない。都市生活者に比べ、地域の農業や中小商工業の生活者が政治論議から取り残されている。来るべき選挙では、農業と地方政策への理解と熱意を基準に一票を投ずべきではないかと思う。(金右衛門) (2003.9.1)

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