「農協のあり方研究会」にひとこと
自主ルールづくりとJA改革のゆくえ
JAは信用・共済事業に頼らないで、経済事業のみで独立採算をとるように改革すべきであるという報告書の指摘はよく理解できる。もう何十年も前から言われてきた事だから。「選択と集中」という表題を掲げて改革の理念としている。これは競争力のあるものは更に強化し、競争力のないものは撤退せよとの意味だという。
JAでも全農でも各事業部門では悩みながら常時実行してきていることであり、今さら基本方向として示されても、担当者はとまどうだろう。
JAは経済事業の自立を目指し、全農はJAの補完に徹する方向を目指せと言う「改革」もあらためていわれなくとも当り前のこと。研究会委員や事務局がJAと全農の経済事業をあまりご存知ないからだろう。
報告書は、JAバンクシステムの確立や全共連の共済運営の一元化で信用・共済事業は改革が進んでいるとしているが、はたしてそうだろうか。金融の方こそ潜在的には将来大きな問題がJAに潜んでいるように思える。
経済事業を信用・共済事業とことさら切り離して論じているが、農家組合員の段階では信用・共済と経済は表裏一体または両輪である。
偽装表示事件を何度も強調し、だから「全農改革を断行」と言っている。
一部生協向けの鶏肉が不足し輸入肉を混入した全農チキンフーズ事件により、責任をとって当時の全農会長は辞任し、昨年8月、学識経験者から理事長が選任され、経営体制は一新されている。裁判でも当時の子会社全農チキンフーズ役員は有罪判決を受け入れた。新執行部は行政の指導に基づき20万点の取り扱い品目について点検し、全農役員の挨拶となれば、お詫びを繰り返している。日本ハムが国民の税金を意図的に騙し取った行為と比較すれば、事件の内容も反省の態度も雲泥の差である。生協との鶏肉の取引は既に再開しているし、もう禊は済んでいると思いたい。
「全農改革の断行」は県本部を含む。35県はこの基本方向を目指さなければならないが、全農とまだ統合していない「ホクレン」や「愛知経済連」「静岡経済連」「宮崎」「鹿児島」等は報告書に名指しがない。改革しなくてよいのだろうか。また、道県内のJA経済事業は全部黒字なのだろうか。また、農協改革の推進力として、全中が強力なリーダーシップを発揮すべく、経済事業版自主ルールを策定・公表し、これに基づいて指導すべきであるとしている。
ここまでくると、「農協のあり方研究会」報告書の真意と実行性に首を傾げたくなる。全中は指導機関ではあるが、協同組合運動の啓蒙・教育機関であり、管理部門・農政には強くとも、経済事業・現業の経験はないはず。全農1万人余、JA約20万人職員の経済事業の遂行に有効な自主ルールを作れるとはとうてい思えない。内容に説得力あるものは無理だろう。経済は正に生き物であり、JAも全農も、地域と世界の自由経済の真っ只中で斬った張ったの仕事をしている。手数料を値上げすればJAの収支はいつでも改善できる。
しかし、組合員・消費者を納得させるには困難を伴う。競争相手もある。そこをどうしたら黒字になれるのか長年悩んできている。研究会による経済事業版自主ルールづくりがJA改革にかえって負担や障害とならなければよいが。
(金右衛門) (2003.4.23)