風評被害にひとこと 地震と原発
新潟中越沖地震から2ヶ月が過ぎた。震源地は柏崎市で震度6.8、一方新潟の沖合いに浮かぶ佐渡島は震度4で、道路や建物への損傷は全くなかった。しかし、新潟県への観光客の激減という被害を受けている。佐渡島だけでも1万人のキャンセルが出た。
佐渡おけさの歌の文句に「ハアー 佐渡と柏崎は竿さしゃ届く、橋をかけたや船の橋」とある、佐渡島は安全だったにもかかわらず、風評被害の影響は甚大だ。柏崎市刈羽にある原子力発電所に地震による火災が発生し、テレビでその様子が繰り返し放映されていたのが響いた。また、放射性物質の一部が海へ流失し、海水を汚染したのではないかという報道も不安を駆り立てた。海水への漏れはごく微量で動物や人体に影響は全くないと公表されたが、7〜8月の海水浴客のキャンセルにつながった可能性はある。米など農産物、わかめや魚の水産物への風評被害もこれから出る恐れがある。
佐渡の海は青々として濃く海底は深い、夏の海面は静かな凪で芝生を敷き詰めたように地平線の彼方まで続いている。その先にはロシア大陸や北朝鮮がある。フェリー船が新潟港を離れる時、数十羽のカモメの群が船上を舞い、デッキの観光客から投げられるポップコーンの餌を求めて走行する船を追いかけてくる。新潟港―佐渡島間は2時間20分の航海時間。カモメ達はせいぜい30分の飛行で、その後はあきらめて新潟方面へ帰ってゆく。佐渡を離れる時も、佐渡のカモメの一群が船上客を佐渡沖までお見送りする。平和な光景である。
原発が柏崎市刈羽に存在しなければ、地震による風評被害も限定的だったろう。日本中に原発は55基あるという、原子力の占めるエネルギー割合は31%、国は40%にまで高める方針という。原発はクリーンで安全とは言うが、地震国ニッポンで原発が増えることには誰もが不安を感ずるだろう、又今度の新潟中越沖地震の風評被害への対策はどうしてくれるのか。新潟県観光協会長が首相へ異例の風評対策の陳情をした。
情報は全て公開し、隠蔽はしないと当事者は言い続けるが、聞く方は専門知識に乏しく判断に迷う。IAEA(国際原子力機関)の調査団を新潟県柏崎市が受入れ、客観的な評価を期待した。ドイツは、今後原発を新設せず、太陽熱や風力など自然エネルギーを伸ばしてゆく政策だとNHK日曜討論で、ある科学評論家が紹介していた。日本もその方向を選択するのが平和のためになるような気がする。(金右衛門)