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コラム
反射鏡

より前進した情報公開を

 株主総会のシーズンがやってきた。3月決算企業の7割強が、6月27日の10時から総会を開催するという。相変わらずの集中ぶりである。少しは運営の改善をと期待しつつ、数年ぶりに出席することとした。対象にはシステムで問題を起こした巨大銀行の系列証券会社を選んだ。

 株主席の最前2列は、既に動員された社員株主とおぼしき人達で占拠されている。一般株主はと見れば30名ないし50名程度のようである。
 ズラット会社席に陣取る会長以下、ピリピリと緊張しているのが手にとるように伝わってくる。何に怯えるのか、まさに専守防衛もこれに極まれリといった感である。ただひたすら短時間で、業務報告等の議案承認を得ることのみに徹している。
 株主1名から、発言があったが、対話とは程遠い展開。後はシナリオどおりに進行。そこには株主尊重の発想はみじんも感じ得なかった。念のため、当社は無配企業であり、配布された資料は新書版20ページ程度の老眼鏡必需の議案書のみである。

 日本における企業経営と株主との関係なぞ難しい命題を論ずる気は毛頭もない。農協の総会と比較していただければ、それで結構である。彼我の差はあまりにも大きい。農協がいかに優れているかを強調して、舌の根も乾かぬうちから、一転して批判に転じたい。

 組合員への情報公開の状況は、総会資料に如実に示される。改めて数農協につき頁をめくって見た。ここ数年、充実度の向上は顕著で、内容・表現・編集いずれをとっても、一般企業体とは比較外の高水準である。それでもあえて苦言を呈したい。組合員からなる協同組合の立場からすると、まだ不十分と言いたい。具体的には共済事業を例にとろう。

 総会資料には、当該年度の契約量が共済種類ごとに新契約・保有別に、また長期・短期合計で付加掛金が記載されているのが一般的である。共済金の支払額と内訳が示されている所は、まだ少ないようである。共済事業が組合員にその成果をもたらすのは、何といっても事故・満期等による共済金の支払いである。肝心要の事項の記載例が少ないのは本末転倒である。事業歴史の浅い段階では、契約量も組合員への浸透度を測るためにも、必要記載事項であったとは思う。50年の星霜を経た今日でも、契約量をもって第一指標とするのはいかがなものか。次いで、共済資金の運用についてほとんど触れられていない。理屈からいえば農協には共済資金の保有機能はない。したがって、その要なしとは言えばそれまでであるが。組合員共有資金30数兆と呼号しているのである。割戻しが減少しているだけに、なおさら組合員にその運用内容を全国トータル数字ででも報告すべきであろう。

 こうして見てくると、どうも経営体本位の発想にもとづく情報公開で、組合員主体と言い難いようである。キイを叩きながら、冒頭にあげた証券会社の総会運営が目に浮かぶ始末。さらに一段と組合員に視点をおいた情報提供を祈ってやまない。


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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