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コラム
反射鏡

観光立国懇談会発足に関連して

 政策検討のための懇談会・審議会流行である。隠れ蓑とか丸投げなら困るが、十分に機能してくれるなら、民意の反映の場としても結構だと思う。今回、新たに観光立国懇談会なるものが発足したようだ。設立の趣旨には“国際交流の増進、我が国経済の活性化の観点云々”とあるものの、日本人の海外旅行に比べ、外国人観光客の訪日の圧倒的な低さが、その設立動機の主因との印象が強い。
 懇談会開催の趣旨の流れ、第1回懇談会提出資料(我が国の観光の現状)の内容、検討メンバーの顔ぶれを見て、2点の問題点を感じざるを得なかった。本来なら、今後の検討の動きを見た上で、論ずべきこととは思うが、答申にいたるまでにほぼ半年は要すると思われるので、先行して申し述べておきたい。

 第1の問題点は、強調度を高めた次の2点の問題提起である。(1)訪日外国人旅行者数は、日本人海外旅行者数の約4分の1、(2)国際旅行収支は約3.5兆円の赤字。国内観光の諸々の課題を反映した結果数値として、提起されているものと思いたいが、正直なところ、国際競争重視と経済的視点の先行を感じざるを得ない。
 むしろ、資料には記載されているものの、強調度の低い国内観光の低迷をこそ、大きくクローズアップすべきであろう。すなわち、国内観光旅行をみると、ほぼこの10年間で、年間の国民1人当たり宿泊数は3.06から2.23へ、旅行回数は1.73から1.42へ、それぞれ大きく減少しているのである。日本人が日本国内観光に対し敬遠傾向にあることこそが、最大の追求課題とされるべきで、外国人観光客の増減なぞは、そのはるか下方に位置すべき課題である。

 国内旅行低迷の要因は多々あろう。旅館など宿泊業がその際たるものであるが、観光業界の経営感覚のどうしようもない古さに、その主因が求められよう。旅館と変わらぬ民宿、人頭税的な宿泊代金などキリが無いので、個々の事例列挙は省略する。彼らの自己改革なくして、行政サイドの努力は賽の河原である。

 第2の問題点は選出された懇談会メンバーの顔ぶれ。小生の感覚のニブサによるならよいが、その顔ぶれからは、ローカルの香りをかげないのである。観光立国のための議論は、旧態依然の観光業界の延長線上では駄目なのである。生きた自然につつまれ、草の息吹と土の香りが、観光立国の大きな柱にならねばと考えるのだが…。そこで農山漁村の関係者がなぜ選ばれないのか、不思議である。これでは懇談の方向にも、期待が持ち得ないというものである。
 なぜ、農協関係者に声がかからないのか。政府(内閣官房)の無能からか、それとも農協にそれに値する活動実績と思想がないのか。大いに考えさせられるところである。

 農山村で行われている地道な観光活動の芽生えが、多くなったとの話である。残念ながらそのニュースは、なかなか伝わらない。
 話は飛ぶが、農協の最大課題である消費者重視の農畜産物の加工・直売、その優れた先進事例なども、随所に展開しているのであろうが、聞こえてこない。小生の耳が遠いのか、感度が鈍いのか、農協組織の情報機能が低いのか?それとも…。心ある方の教えを乞う次第である。(藤塚 捨雄)  (2003.2.13)


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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