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コラム
反射鏡

観光立国懇談会発足によせて(続)

 懇談会設立の趣旨、提出資料などから、やや先走って、経済競争意識先行の危惧の恐れありと事前に予測したが、第2回懇談会へむけた論点整理メモ(素案)などを見る限りでは、やはり懸念どおりのようである。そこで、くどいようであるが、先月に引き続き観光立国懇談会について論じたい。

◆貧すれば鈍す

 たしかに日本は経済危機に見舞われている。それだけに国際旅行収支マイナス3.5兆円が大きく取り上げられているのであろう。一方、貿易収支は減少したと言えど、プラス9.6兆円であることも忘れてはならないと思う。また、477万人の訪日外国人に対し、1622万人もの日本人が海外に出かけていると強く提起している。もっと多くの外国人に来てもらって、経済的利益を得ようと言うことであろう。貧すれば鈍すというが、そのものずばりである。魅力ある日本を外国人に見てもらうことは大賛成である。でもどうも計算臭が鼻につく。それではお目当ての外人さんも敬遠するのでは…。

◆どこに目を向けるか

 何はさておき、日本人が気持ちよく満足して、国内旅行を楽しめるようにすべきである。
 観光立国の基本はこれに尽きる。このことがなされさえすれば、自然に外国人旅行者の訪日数は増加しよう。海外にのみ目を奪われるなかれ、青い鳥は身近にと言いたい。
 それでは、どうすれば日本人の足が国内に向くだろうか。ズバリ観光業界の意識改革をおいてない。
 ヤラズブッタクリからの脱皮、ついで三波春夫ではないが“お客様は神様”の精神に徹底してこだわることである。つまり、もてなし・ホスピタリティの気持ちがきちんと根を張らねばならない。その上にたって、諸々の施策を懇談会とやらで、論じてもらえばと思う。幸い、第1回の議事録をみると拙劣な経済至上主義へ否定的な意見も多く、思いのほか建設的な論議展開も期待できるのでは、とも思っている。

◆消費者の気持ち

 観光業界へと同じことが、農協界へも言えるのではと思っている。小生“お客様は神様”なる言葉を“消費者の気持ち(=需要)を大事に”と解している。食管制度の負の部分であろう、販売への意識、換言すれば消費者尊重が農協では希薄であったことは否めまい。最近の農畜産物の不当表示問題は、まさにそのことを如実に示していると言えよう。
 協同組合として組合員相互で活動が完結するうちはいいが、都市生活者など組織外を対象とする経済活動は強まる一方である。朴訥・素朴さ、非世間ずれなどの長所が逆に、相手には傲慢・無愛想ととられるケースもまれではない。このあたり大いに考えるべきではなかろうか。

◆利用「していただく」

 農協共済も観光業とも言える温泉保養施設を所有し、都市生活者も対象に営業活動を展開している。接客・もてなし・サービスの点で、必ずしも良い印象を与えているとは言い難いようである。貴重な組合員資産であり、小生、農協共済OBとして、外部にその利用を大いに推進したいところであるが、二の足を踏んでいる。甚だ残念である。
 農畜産物は組合員の生産活動の結実であり、保養施設は共済掛け金の集積である。販売・運営にあたる農協が、買っていただく・利用していただくの精神でことにあたれば、都市生活者との接点が一層の厚みを増すのではなかろうか。(藤塚捨雄)  (2003.3.18)


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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