農業協同組合新聞 JACOM
 
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コラム
反射鏡

たかが大相撲、されど農協組織は

 この稿が紙面を辱めるころ、大相撲名古屋場所は幕を閉じていると思う。その大相撲であるが、小生、幼児の頃からの大のファンである。ただここ10年の衰退ぶりに業を煮やしきっている一人でもある。
 空席の目立つ桝席がそれを象徴しているが、その人気の低落は激しいものがある。ともかく見ていて面白くないのである。けが人続発で毎場所、横綱・大関など上位を中心に10人前後の休場者が出ることは異常である。
 そこには構造的な問題が内在することは明白である。過去に幾度か、ほんのささやかな小手先改革のメスも試みられたが、何れも不成功に終わっている。
 
◆要因は様々あれど、基本はその閉鎖体質

 多くの人達から、衰退の要因が枚挙にあまるほど指摘されている。けがによる休場者の続出、横綱の休場など人気力士の不在、力士の稽古不足と無気力、極端な肥満化による取り口の単純化、導入されない同門取り組み、依然として残る茶屋制度。
 数え上げればきりがないが、基本的には構造問題から目をそむけ、矛盾・不定見を抱え込んだ時代遅れの閉鎖体質の一言に尽きるのではないか。
 
◆相撲はスポーツ 誇大に考えるは愚

 一部屋1名の外国人枠を設定しながら、看板たる横綱を2名の外国人に頼る場当たり方針。女性蔑視そのものといえる地元の大阪府知事を土俵にあげない時代錯誤。依然として招待客中心の観客対応と、子供だましの大量のお土産。6時打ち上げにみる帰途の交通事情を無視した時代感覚…平日中入り後の4〜6時に相撲観戦が許されるのはドコのドナタですか。
 けが人続出の主因を、力士の稽古不足と無気力・根性不足に押し付け、最大の基本課題である年6場所という苛酷な制度に手をつけぬ経営陣の怠慢。それこそ、そこかしこに見られるサラリーマンOBの“今の若い者は”の安っぽい精神論と何ら変わるところがない。
 22歳の朝青龍に、完全無欠の心技体を強要する常識離れしたどうしようもない横綱審議会の面々。現代日本社会そのものの、型にはまったいい子ちゃんを求める発想である。
 格闘技に闘争心と根性丸出しは不可欠である。ましてや22歳の若者には…。逆に大いに褒め上げ、無気力な日本の若者に活を入れる絶好のモデルとすることこそが、彼等の役割ではなかろうか。
 相撲は相撲、特別の何物でもない、たんなるスポーツの一種である。国技と言いたければ言ってもいいが、さほどの意義はなかろう。世界各地に伝来の格闘技がある。なかには日本の相撲に類似したものもあり、モンゴル相撲などは、その最たるものと言えよう。各地から類似相撲の勇士が集う、結構なことではないか。外国人枠なんてケチな小細工は撤廃されたと思うが、小生の過大期待からくる勘違いか…。
 
◆外部人材導入で改革を

 年少より相撲社会に育ち、今日までその閉鎖された孤島で過ごした親方衆のみで、あの組織を運営できるほど平穏無風な時代ではない。一刻も猶予はならない、外部から有能な人材を導入し経営改革に当たらせ、我々大相撲愛好者を安心させてもらいたいものである。
 
◆農協組織も瓜二つ

 と論じてくると、我々の身近にある大きな組織との類似性を感ぜずにはおれない。すでに賢明な諸兄がお気づきのように、農協組織である。多くは語らぬこととするが、閉鎖性と時代感覚の欠如、既得権防衛と新規参入排除に終始、構造問題への取り組み忌避など、どこから眺めても瓜二つである。されど、大相撲は小生にとっては、たかが趣味の世界。農協への思い入れは、それとは全く次元の異なるレベルにある。農協組織の覚醒と改革への努力を願うや切。(藤塚捨雄) (2003.7.24)

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