農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
反射鏡

丸投げ審議会方式はもうご免だ
――道路公団民営化委員会の顛末を見て――

◆乱立する政策審議の会議体

 民営化による道路公団改革はどこに消えたのだろうか。際立った政治手品の見事さを見せつけられたような一幕の舞台劇であった。
 それにしても政策立案に関する政策会議と呼ばれる審議会・委員会なるものが多すぎる。紙面をとりすぎるが、少し例示してみよう。
 観光立国懇談会、経済財政諮問会議、少子化への対応を推進する国民会議、総合規制改革会議、男女共同参画会議、道路関係四公団民営化推進委員会、知的財産戦略会議などなど、きりがないのでこの辺で打ち切りたい。並びたてれば、あたかもエンドレスの印象を与えるように続くこととなる。その多くに民間委員として著名な大学教授・評論家・経済人等が顔を連ねるのが一般のようである。

◆迷走を重ねた道路民営化委員会

 そのなかで話題を呼んだのは、何と言っても道路関係四公団民営化推進委員会であったろう。猪瀬なる作家委員の任命騒動から始まって、今井委員の委員長辞任と今井・中村両委員の実質的な委員辞任。委員会報告書に対する官邸・国土省さらには自民党の複雑な対応と動き。その結果、政府・与党協議会等での協議を経て、最終的に閣議決定した政府案の骨組みは、民営化推進委員会の意見書とは、大きく意味合いを異にするものとなっている。一般紙は、その紙上で予想通りの骨抜き法案と評している。
 政府・与党協議会での議論結果をめぐって、さらに2委員の辞任と1委員の実質辞任(以降委員会を欠席)があり、委員会は機能停止に陥ってしまった。委員会の紛糾のみならず、道路公団総裁の解任劇までが華やかに加わってしまった。とどのつまりは、政策論争よりもワイドショー的な人間葛藤劇の展開を観ることとなった。
 さらに追い討ちをかけるかのように作家委員の茶番劇まで加わってしまう。テレビに出演し、○△×の表示のあるパネルを用いて成果を誇示するボクチャン振りを発揮するのである。加えて政策当局と法案化の内容につき、いろいろやりとりをしたとも伝えられている。
 彼がどういう資格・立場で関係官庁と話し合ったのかは知らないが、少なくとも委員会の委員としてではあるまい。委員会と法案作成の関係組織とは厳然と区別されねばならない。若し委員会に監視機能があるならば、委員会として全委員でその任にあたるべきである。

◆迷走委員会の元凶は

 こうしてみてくるとこの委員会の姿はあまりにも無様であった。しかし、何をおいても、委員を任命し、道路公団の民営化という重要課題の実現を、この委員会に託した小泉内閣の責任こそ、厳しく追及されねばならないであろう。と同時にむやみに委員会・審議会の乱設と丸投げに終始する政治姿勢は糾弾に値する。さらに、民間に委員を求めいかにも民意尊重するかにみせる責任転嫁も、また排除せねばなるまい。

◆徹底した政策審議こそ国会の役割

 重要な課題への取り組みがあまりにも安易であるといわねばならない。むしろこのような政策課題にこそ、立法部門が最初から責任を持って取り組むべきであろう。国会の中に、例えば道路公団民営化特別委員会を設け、参考委員として内外の識者を呼び、公開の場で政治の責任で、論議と検討を進めていくべきではなかろうか。
 審議会や委員会の議論は議論として丸投げ、行政による法案化の過程で換骨奪胎もないではなく、その間に政党は地下水脈で縦横に動き、最後の立法府では多数決と強行採決を担保にした不燃焼論議。これでは本当の改革は百年河清を待つに等しいと痛感している。 

(藤塚捨雄) (2004.3.11)

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