農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
反射鏡

タバコをどう考えるか−農協共済は官か民か
―わが同人誌から―

 共済連OBの仲間で同人誌めいたものを編集し、隔月に発行している。最新号の発行部数は150部で、ページ数は110とやや部厚い。量的には、いくぶん高度成長気味である。問題は内容であるが、かなり充実しているものと自負している。テーマは、農業、協同組合、共済事業を主体に政治・経済・社会から文化一般へと、いささか貪欲に広げている。投稿者は60〜70歳代が大半であるが、その筆力・論点もさることながら、行間からにじみ出る気力は並々ならぬものがある。その旺盛な気力と体力のせいか、原稿枚数は増量の一途で、数回にわたる連載物が比重を高めている次第。
 中高齢者問題は本日のテーマではない。本稿では、わが同人誌に掲載されているなかから2点を紹介し、コメントしてみたい。
 
 ○H氏がタバコ問題を提起している。氏は強力な喫煙反対論者で、同人誌には“葉タバコの生産は「農業」か”のタイトルで以下のような問題提起をしている。
 農業の定義は「土地を耕し穀類・野菜・園芸作物などの有用な植物を栽培し、また植物を飼料として有益な動物を飼育した、人類の生活に必要な資材を生産する産業…」(大辞林)とある。ところが、健康面でタバコのもたらす害毒を考える時、タバコ栽培を農業、栽培者を農家と言えるのか、強く疑問を呈している。これに対し小生は、それを言うなら多くの農畜産物も安全性から同様のそしりをと反論。氏は抜きんでたタバコの害毒の厳しさを強調、JAグループも組織的にタバコ問題に厳しく対応すべきと批判を加えている。
 農協が社会的支持を得るかどうかは、食品安全と偽装問題にかかっていると言えよう。そのなかで氏の提起に真摯に耳を傾けねばなるまい。
 
 ○K氏は、農協共済生みの親とされる賀川豊彦論をすでに5回にわたって同人誌に連載している。氏の論陣は賀川豊彦個人に留まらず、戦前の協同組合保険運動から戦後の農協共済草創の時代に及ぶ。時代背景、千石興太郎氏など農協運動家の活動が活き活きと描かれている。また、保険会社・大蔵省との戦いも克明に記されている。
 一方、賀川豊彦の考えを彼の文章から次の部分を引用している。「協同組合は自主と相愛から国と民族を再建するものである。戦後派の新しい共済事業はその協同組合を力強く前進せしめる。いうならばジェット・エンジンとも言い得るであろう」。まだ海のものとも山のものともつかぬ農協共済への期待と励ましの言葉である。これに応え、共済事業発展へ向け多くの草莽の志士の献身的な活動が語られている。熱と夢に支えられた先人の労苦のあとが強く偲ばれるのである。
 
 単なる懐古は意味がない、逆にマイナスである。ただ草創期の精神は尊重されねばならない。特に今日のような混迷・転換期には、農協共済は生まれながらの自らの力で助け合う農民、すなわち、れっきとした自立のたみ(民)の組織であり活動である。しかるに最近策定された3カ年計画によると、相変わらず民簡保なる言葉が随所に見られる。この場合の民は、生保あるいは損保を指すのであろう。とすると農協共済は民の組織ではないこととなる。一見、些細に思えるが、基本認識の問題なのではなかろうか。(藤塚捨雄) (2004.6.16)

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