農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
反射鏡

プロ野球組織再編騒動を眺め

◆プロ野球に背を向けた野球熱中少年

 嫌になるほどの大騒ぎである。7月8日の朝刊、一流紙の一面にはプロ野球オーナー会議の結果が大きく報じられた。その多くは大見出しでのトップ記事である。たかがスポーツ、プロ野球なのにこの扱いである。
 そうは言うものの、敗戦後の日本での野球熱は凄まじかったと思う。小生も中学生までを野球少年そのもので過ごした。手製の布グラブで夜暗くなるまで野球に打ち興じる一方、ラジオにしがみつき川上・大下の英姿を思いえがく毎日であった。甲子園や西宮へ天にも昇る気持ちで、片道5〜6時間かけて押しかけた記憶、後楽園で初ナイターを見たときの感激、鮮明に残っている。
 この野球熱中少年が、球場で日本のプロ野球を観戦しなくなってから久しい。この20年近くも球場には足を運んでいないのではなかろうか。スタンドの狂騒に耐えられなくなったからである。大きな旗を振り回して視線をさえぎり、鉦や太鼓で騒音をかきたてられては、落ち着いてプレーを観戦できない。
 とは言うものの、根っからの野球好きである。米国駐在中にはヤンキースやメッツの球場を中心にかなりの頻度で観戦を楽しませてもらった。ところが帰国しては10年以上経つが、たまさかのテレビ野球観戦のみである。理由は球場の雰囲気と日本野球のパワーとスピード不足につきる。熱血漢・張本氏がどう嘆こうと、野茂、イチロー、両松井などスタープレイヤーが海を渡り、プロ野球人気が凋落するのは理の当然である。

◆プロ野球界は政治・経済界の縮図

 そうしてここにきてこの騒ぎである。たかが野球である。面白くなくなりファンからそっぽをむかれればおしまいなのである。1リーグにしようと2リーグ制で残そうとまた、合併の是非なんぞは末節、些細な問題である。小生にとっては全く関心外である。
 プロ野球凋落の基本的根源はプロ野球界の既得権確保に終始する保守的、旧時代的体質そのものにある。その象徴が渡辺巨人軍オーナーの傍若無人きわまる言動であると言えよう。これがかつては、名論文をものにした敏腕の政治記者のなれの果てかと、淋しくもなる。オーナー会議に集まる面々を見ると、年齢の高齢化もともかく、そのほとんどが斜陽産業や業種の代表である。新聞、鉄道、食品流通などであり、パッとしない。リース業もいまや色褪せた感じときては、古色蒼然グループそのものである。そこには新進のIT産業(ライブ・ドア社)を受け容れる気力・余裕・感度なんぞあり得るべくもない。期待する方が無理なのである。
 皆さんもお気付きのように、まさに、今日のわが国の政治・経済界の縮図そのものである。大きな瓦解が目前に迫っている感じである。農業・農協界とて同様である。いや、最も崩壊可能性が高いやも知れない。他山の石、ファン(国民)に目を向けた農協改革の前進を願ってやまない。(藤塚捨雄) (2004.7.27)

社団法人 農協協会
 
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町3-1-15 藤野ビル Tel. 03-3639-1121 Fax. 03-3639-1120 info@jacom.or.jp
Copyright ( C ) 2000-2004 Nokyokyokai All Rights Reserved. 当サイト上のすべてのコンテンツの無断転載を禁じます。