農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
反射鏡

NHKよ自浄努力で改革を
―視聴料を払っているチャンネルを見れるよう―

◆さらけだされたNHK体質

 それにしても、海老沢前NHK会長を始めとする新旧NHKトップグループの常識欠如と感覚麻痺には恐れ入った。辞職3人衆のまさかの顧問就任。世間の反応に驚き仰天し、即刻の顧問辞任。こんなお粗末の寸劇が、“世界に冠たる”と言われるわが国の公共放送局を舞台に演じられようとは。情けない限りである。周知のことなので列挙しないが、一連の不祥事とその発覚後の対応はあまりにも不手際に過ぎる。不手際というよりも、どうしようもない腐敗と堕落のありのままの姿を、世間の目に露にさらされたと言うべきなのだろう。
 新会長も前会長も同様に「真摯に反省し、改革に邁進します。情報の公開などに努めます」と言った趣旨のことを繰り返し述べているようである。ところがその舌の根も乾かぬうちから、旧態依然さをさらけ出す始末である。例えば、辞任3人男の顧問就任の予定を、直ぐには公にしなかったこと。またその経済的待遇内容については、個人のプライバシーに属するとして明らかにしなかったこと。何れも隠蔽体質そのものであり、そこには、いささかなる変化の兆しも見られなかった。

◆自浄努力こそ王道

 1月29日の新正副会長そろっての「NHKの再生をめざして」と称する特番も、何故か来年度予算説明に終始するていたらくである。国会あるいは関係官庁に説明している感覚なのであろう。抜本的改革を求める視聴者向けの特番との感度が、制作スタッフも含め基本的に欠如していたのであろうか。
 こういった一連の動きを見ると、放送そのものへの不信と疑問を抱かざるを得なくなり、NHKへチャンネルを回さなくなってしまう。明るみに出たNHK体質から、政治圧力に抵抗するなんてことは考えられない。政府与党の気持ちを忖度した政治番組が制作されていると思うと、とてもNHKニュースを見る気にはなれないのである。公共放送そのもののあり方が問われることとなろう。
 「経営委員会」に加えて「有識者懇談会」なるものを新たに設置、公共放送とか受信料制度を検討するとのことである。いい加減にしてもらいたい。新たな防波堤を設けるようなものである。有識者と称する委員には、またぞろ社会に疎い学者・文化人といった人たちの名が並ぶのであろう。あるいは知名度の高い繁忙な経済人が。そこからは改革のエネルギーは発生しまい。あえて懇談会を設けるなら、視聴者の中から公募で委員を募るようにせねば前進は期待されまい。望むらくは、役員総交替などの荒療治で、自らの自浄努力で改革に立ち向かってもらいたいものである。

◆全農へも一言

 自浄努力と言えば、全農グループの海外畜産物等の輸入問題である。ここ最近の一般紙では、日本経済新聞のみであったと思うが、次のように報じている。「全農は4日、外国産黒豚の輸入事業から撤退すると発表した。国産黒豚と競合するとして農水省から事業を見直すように指示を受けたため。果物や野菜などの輸入も今年3月までにやめるかどうか判断する」(2月5日付朝刊)。多くは語るまい。農協は日本の農業者のための自主的な組織である。農水省の指示に従ってと書かれたことも残念である。果物と野菜については、一刻も早く自らの判断により、適切な意思決定がなされることを願うのみである。(藤塚捨雄)

(2005.2.24)

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