農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
反射鏡

親しい友人をなくして思うこと
―家庭と職場の分離化をどう考えるか―

 私事に亘って甚だ恐縮だが、昨年末来相次いで最も親しい友人を4人も失った。悲しさは筆紙に尽くしがたい。ほぼ同年齢の友から10歳年長の先輩におよぶ。いずれも東京都内もしくはその衛星都市に住む、リタイヤ後数年経過したかつての高度経済成長時代のごく普通の企業戦士である。
 非常に親しい間柄だったので、葬儀のお手伝いなどをさせていただいたが、その間いろいろと多くのことを考えさせられることとなった。人生観とか人間の寿命といったレベルの話は私の柄には合わない。男なるものの居所、企業と家庭の関係、戦後日本社会のあり方といった問題である。
 4人の方はそれぞれに差異があるものの、健全で標準以上のサラリーマン家庭を営んでおられた。個人の家庭にふれる失礼と若干の拡大解釈、独断・偏見をお許しいただいて、いささかなる私見を述べさせていただくこととする。

◆職場と家庭の分離化の進行

 リタイヤ後の経過年数もあるが、永年勤続した職場やそこでの友人についての情報が、各家庭にほとんどもたらされていないようである。
 職場と家庭の分離、仕事を家に持ち帰らない、個々の家庭の独立、これが望ましい姿と学校で教え込まれたこと、アメリカの例を引いての評論家の論調などを強く記憶している。生活の糧を得、人生の大半を過ごす職場と家庭との接触が希薄であってよいのだろうかと、今にして我が家を含めて強く感ずるのである。
 職住遠隔もその要因だと思うが、誤ったアメリカ像を描き、その模倣を提起した進歩学者?の罪は重い。同時にそれに乗せられ、職場と家庭の分離に邁進した亭主族のあり方も、厳しく追及されねばなるまい。

◆地域社会と縁薄き企業戦士

 次に、地域社会との関係となると、当の企業戦士にとっては希薄を通り越してゼロに近い。その地に生をうけた人を除いて所謂外来者である。特別の地域活動をせぬ限り、親しい人間関係なんぞ構築しようもない。
 こうしてみてくると、首都圏に特に顕著に現れた現象かも知れぬが、亭主は職場、奥方は地域と、1つの家庭の中にあって、それぞれが別途の人間関係を維持しているようである。どうも家庭を軸とした形ではなさそうである。経済至上主義と関連した都市化の進行に、その要因ありと解するが、農村ではどうであろうか。職住近接の中で、職縁・地縁と解け合って家庭が存在しているのであろうと信じたい。どうも、社会問題で疑問を感じたときの首都圏居住者の夢と期待の行き着く先は、とどのつまりは農村へと向かうようである。

◆全農の自力更生を熱望する

 その農村というよりも、農業者の組織である農協の動きに赤信号が灯っているのが残念至極である。全農の理事長らはすでに辞任した。遅きに逸したが、当然のことである。問題はその後任を全中・農林中金からもってくると一般紙の情報が流れている。ガセネタであることを信じたい。金融と管理で対応し得るほど生易しい状況ではあるまい。あまりにも安易な時代錯誤的なマンネリズムに陥った手法としかいいようがない。それほどまでに全農には人材が払底してしまっているのであろうか。全農による自力更生が不可能にまで組織的退廃が進んでいるのだろうか。後がない全農ではあるが火事場のクソ力は残っていよう。その爆発を祈ってやまない。 (藤塚捨雄)

(2005.7.12)

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