◆大企業・大都市のみの景気回復、軽視される地域の衰退
大手を中心に企業の業績回復が急速に進んでいるようである。その主たる要因は90年代後半からの厳しいリストラに求められよう。効率化志向の結果でもあり、強者と弱者の峻別も生み出されている。
回復要因の良し悪しは別にして、増益・増収企業の続出を受け、日本の株式市場は久しぶりの大活況である。取引高はバブル期を越え、日経ダウも5年ぶりに1万6000円台に回復した。この流れの中で一般紙や経済誌には個人投資家相手の株式記事が溢れ始めている。2006年にも2万円台回復を予想する経済・株式評論家も多い。この一面を見ると、なにやら日本経済は順風満帆の航海を始めたかに見える。そうであろうか、東京や大阪などの大都市、兜町や証券取引所の活況、あるいは大企業好決算が日本経済そのものではないことを忘れてはなるまい。
極論すれば、「大都市は栄え地方は衰弱」のさらなる進行が今日の日本の姿ではあるまいか。土地価格も一部には上昇が伝えられるが、東京などそれもそのごく局部に限定した現象であって、地方は依然として土地価格の下落が続いている。最近相次いで公表された内閣府の「地域経済2005」や総務省の「国勢調査速報」でも明らかなように、人口も大都市圏集中の勢いは止まっていないのである。
小泉内閣は三位一体の改革とやら称して、なにやら地方重視の姿勢を示しているが、一向に進捗を示していないようである。例えば、今回の生活保護費の国庫負担率引き下げについても然りである。3兆円の税源移譲は実現はしたが、権限そのものは国が離さないので地方分権は進まないとのことである。
首都圏の表面的な繁栄、一部日本経済の活況の目を奪われることなく、地方の活性化をどう実現していくかが、今日の最大課題であると考えるのである。その場合、構造的に劣位にある地方の権限強化と優遇策が決め手となろう。
◆地域と農協特性を軽視した全国連理事会構成
ところで地方の最大産業たる農業、その活動組織である農協、はどうであろうか。その業態の性格からして地方主体であるべきは明々白々である。方針・施策策定、組織運営、人材活用にあっても、地方の実情と意向がより尊重されねばならぬことは言うまでもなかろう。紙面も尽きてきた、そこで活動の主軸たる人材活用について、それも筆者の関係が深かった共済事業に限定して言及しておきたい。
共済事業の連合組織が統合して早や5年、組織代表で構成される経営管理委員会制度が導入されてからも3年余を経過している。その中で問題視されるのは、日常の執行活動の責を担う理事会の構成である。専任性と専門性が必要とされることから、全理事が旧全国連と旧県共連の職員出身者で占められているのは現段階では理解できる。問題はその比率である。他の全国連はいざ知らず、全共連では11名の理事のうち旧全共連出身がなんと8名を占めているのである(平成17年7月の改選までの旧県共連出身は僅か2名)。旧全共連出身となると、基本的には採用時から所謂東京本社勤務に等しいと言える。生保ですら、地方の営業所・支社勤務経験の中から最前線の実情と顧客意向を体得してくるのである。ましていわんや農協組織にあっては、前線経験と感度がなくして組合員本位、地域重視の活動が可能なのだろうか、はなはだ疑問である。何故このような農協特性を無視した構成比率になっているのか理解に苦しむところである。最近、全国本部と各県本部との間で人事交流が進められている。その努力は多とするが、基本は役員構成である。少なくとも旧県共連出身者が理事の過半を占めるよう改善すべきではなかろうか。(藤塚捨雄)