農業協同組合新聞 JACOM
 
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ミカン”と“共済”がJAのブランド
静岡県・JAみっかびの共済事業
2人で長期共済累計4000億円を達成


◆縣さん3000億円、清水さん1000億円達成

清水義博さん
清水義博さん

 JA共済に携わる人で、縣正己(あがた まさみ)さんの名前を知らない人はいないだろう。LA制度が誕生した平成6年から11年連続して全国LAのトップに立ってきたのが、JAみっかびの縣さんだ。そして縣さんとともにJAみっかびの共済事業を支え、11年連続で優績LA表彰を受け、常に全国でも上位の実績を上げてきたのが清水義博さんだ。
 2人は当然だが今年も赤坂プリンスホテルで開催された「LAの甲子園」で、2人に続く5人の仲間とともに表彰された。だが、2人にはそれ以上に大きな感動がこの5月にあった。
 それは縣さんが3000億円、清水さんが同じく1000億円、2人合わせて4000億円という累計実績を達成することができたことだ。
 JAに入組したのは縣さんが昭和47年、清水さんが同49年と縣さんが先輩だが、共済事業では清水さんが57年に、縣さんはその翌年の58年に共済外務専任となっているので清水さんが1年先輩ということになる。清水さんが23年、縣さんが22年の歳月をかけて積み上げてきた実績が合わせて4000億円に達したわけだ。
 16年度の全国のLA1人平均の実績は約9億円だという。全国トップレベルの静岡県の平均でも14億円。今年受賞したLAの平均は33億7000万円だ。1000億円に達するには30年以上の歳月がかかってしまう。二人の凄さがお分かりいただけるだろうか。

◆JAの組織力が生んだ大きな実績

縣 正己さん
縣 正己さん

 2人が所属するJAみっかびは、管内(三ヶ日町)人口が1万6000人、世帯数4398戸。組合員戸数は正組合員が1751戸、准組合員が1105戸、合計しても2856戸と近頃の合併JAからみたら一桁少ない小さなJAだ。JAの販売事業の中心は、JAのシンボルマークにもなっているミカンだ。最近は価格が低迷し厳しい状況にはあるが、他の農畜産物と合わせて年間85億円の販売高を上げている。これは正組合員1戸あたり527万円になる。貯金高は501億円(同1801万円)、貸出金84億円(同326億円)という実績を上げている。
 そして共済事業は、長期共済新契約が約440億円で、その内訳は生命が270億円、建更が170億円となっている。保有契約高は生命が2629億円、建更が1154億円、合計で3784億円だ。16年度の二人の長期共済の実績は、縣さんが9年連続して200億円を超える209億円、清水さんが79億円だ。
 何でこれだけできるのかと縣さんに聞いてみた。
 「何でかといわれたら、組織のおかげですね」との答えが返ってきた。販売・購買そしてミカンの指導員のおかげであり「組織がしっかりしていないと共済の推進はできない」という。組合員のJAへの信頼があるから、縣さんたちの推進活動が成り立っているということだろう。

◆建物には限界がある LAは人間中心で

 縣さんは共済担当になった翌年に奥さんが入院。そのときに生保に比べて「農協共済の入院給付が長かった」ことから共済の優位性を初めて認識し、そのことを組合員に説明することが転機になったと語る。
 清水さんは「長年やっているのでこの間に病気や事故で何人もの方が亡くなった。その中で、3人の子どもさんがいる人が亡くなったとき、1500万円の保障で何ができるのか考えさせられた。保障には限度がないと思う。必要性を説いていけば分かってもらえると思いやっている」と語る。
 いまミカン農家のおかれている状況は厳しい。しかし「農家が厳しいから共済推進をしてはいけないとは考えない。厳しいなかで、もし事故や何かがあったら大変だ。そのときにこそ共済が必要だと考え推進している。もし何もしていなければ、JAのLAとはどういう存在なのかと思う」と縣さん。
 最近は自然災害が多いこともあって、全国的には建更が中心になる傾向が強いが「LAである以上は人間が中心です。建物には限界があります。生命をやらないと数字は伸びません」と清水さんと縣さんは異口同音にキッパリ言い切った。
 こうしたことから、清水さんや縣さんが共済担当になったころの戸当たり保有高は4300万円くらいからいまは1億3514万円と3倍強にもなっている。

◆一人ではできなかった 自分だけから使命感をもったチームへ

 今年5月に3000億円を達成したときの気持ちを縣さんに聞いた。「1000億円、2000億円のときと今回では自分の気持ちはまったく違う」という。それは、いままでは「周りのことを考えず、自分のことだけを考えていた」が、いまは「この3000億円は一人ではできなかった」と考えているからだ。そう考えるきっかけは2つあった。
 1つは、5年前の赤坂プリンスホテルで、おおぜいの人が自分の周りに寄ってくるが「これが私の仲間たちです」と紹介できる人が清水さん以外には「誰もいなくて情けなかった」。そして「なんとかみんなをここへ連れてきたい」と思ったことだ。もう一つは、4年前に組合長から「後輩の指導にあたれ」といわれ課長補佐を兼務するようになったことだという。
 いまJAみっかびには、縣さん清水さんを入れて7人のLAがいる。昔は自分の数字だけあげればよく、意思疎通がなかったが、いまは「勝った負けたと誰もいわない。全員が目標を達成できて、みんなで赤プリに行けて良かった」といいあえるチームだ。
 かつては共済担当に任命されると「大半の人は被害者意識をもち、できる人はいいけれど、できない人は溝ができ、“共済なんかに行くものではない”といわれたりした」。「そういう風習をなくすためにもチーム」という考え方を取り入れたのだという。
 そういうLAの姿をみて、他の事業からLAを志願する人が2人もきた。「それはありがたかった」と縣さん。その二人は現在もLAとして活躍しているが、その一人が「JAではミカンがブランドだが、ここにきてもう一つブランドがあることを発見した。それは共済事業だ」といった。そういうことがいえる「自分たちの使命感にこだわった集団だから大丈夫です」と、チームへの誇りを自信をもって縣さんは語る。

◆彼がいたからできた 仕事で初めて流した涙

 縣さんが3000億円、そして清水さんが1000億円を達成した日「仕事で初めて涙を流しました。これは2人でやった4000億円です。彼がいたから私もできたんです」と縣さん。「一人だったら絶対にできなかった」と清水さん。そして2人を支えたチーム、JAの仲間や先輩など多くの支えがあったからこそできたという2人をみていると、これも協同組合の大きな力の一つではないかと思う。
 LAの甲子園に2年連続して全員で上がった7人のうち6人がSLA(スーパーLA)の資格を持っている。来年春にはもう1人も取得できるだろうという。そのことでJAみっかびのLAは「新しいステップに進むことができる」と縣さんは考える。こうした常に前進し続けようとする意欲が2人で4000億円を達成できた大きなエネルギーだったのではないかと思った。

(2005.7.11)

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