農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
つくば山麓 野良だより

「冬来りなば…春遠からじ!」
――シェリー『西風に寄する歌』
 当地方では“どんど焼き”の行事が地域の子供会の手によって、今も引き継がれている。小正月(1月15日前後)に門松・竹・注連縄などを集めて焚く火祭りであるが、地方によっては左義長。さいとやき。ほっけんぎょう。ほちょじ。おにび…と呼ばれ、その火で焼いた餅を食えば、年中の病を除くという(広辞苑より)。ずーっと我が家の田んぼを会場に提供しているが、当日は季節はずれの大雨に見舞われ、残念ながら1週間延期。せっかくの餅も事前に配られることになってしまった。
 一方、小玉スイカの一大産地を築いてきた、村内のビニールハウスでは4重、5重にも守られた貴重なスイカがすでに出荷の時期を迎えており、友人は今は“正月のおとそ気分”も全く関係ないと嘆いていた!
 1月25日、農協協会主催による「新年の集い」が開催され、私も参加させていただいた。日本の農協・農業を牽引されている(?)各界関係者のご挨拶をお聞きしたが、正直言ってがっかり…。新潟の地震や、米作りの存続は? 今の農業資材の急騰の原因は? 転作の行方は? 等々…もちろん期待はしていなかったが、そんな心を込めた挨拶を聞きたかった。
 同じ日、新年会に先立って「農業協同組合研究会」設立に向け、呼びかけ人会が開かれた。新しい農協像確立のための研究会の旅立ちである。日本の農業の行く末や、農協の現実を憂える全国の学者・研究者、協同組合関係者の皆さんが一堂に会し、いよいよ「本音で語り合う場」が提供されたことに心強さを感じた。これまで農協の悪口こそ言え、前向きな発想をしてこなかった私にとって、大きな勉強の機会を与えていただいた気がした。

◆“生涯現役の姿!”――写真集「東京近郊農家」(東方出版)を観て――

 「本のページをめくると、私の近所のおじさんやおばさんと同じように畑で大根を取り、鍬で耕したり、玄関先で一服している。若いもんは勤めに行っているか、家を出ているか、とにかく昼間はじいちゃん、ばあちゃんの姿しか見えない。本を初めて見たとき、わざわざこんな姿見たくないなぁ…と。今の農業はこんなんじゃない。大きな機械を駆使して次から次へと効率よく作業を進め、大規模経営をこなしているじゃないか! ハウスなど、施設を整え、パートさんを使って、大手スーパーを相手に契約栽培をし、どんどん売り込んでいるじゃないか。農家だって、法人や会社にして営業に回り、加工も手がけて他産業と肩を並べていこうとしている時代なのにー! でも考えてみろよ…それはどれもこれも農水省が進めている姿で、関係機関が開くフォーラム等でこれ見よがしに示されている事例紹介に出てくる農家の姿だ。農家に生まれ、農村に育って農業しかしたことがない私にとって、現実の農村の姿を見るのは、何となく避けたいものだったのだ。改めてページを開く。空の雲。ばあちゃんのしわ。節くれ立った指。ほうれんそうの緑。ふかふかした土の感触。青空。夕焼け。生き生きとした仕事姿。自分の作りたいものを作りたいように作っている。“生涯現役の姿”やっぱり農家のくらしそのものがそこにある」。農協協会主催の新年会で、初めてお会いした女性カメラマン(元演歌歌手? 高橋淳子さん)へ――妻からの伝言。(茨城県大和村在住 農業 野沢博)

(2005.2.10)


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