農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
つくば山麓 野良だより

“蒔かぬ種は生えぬ!”

 梅雨空を眺めながら、ため息をつく9人の仲間がいる。全員60代・70代の大豆組合のメンバー達だ。この地域はかつて県の大規模区画圃場整備事業(全圃場の4分の1が1町歩区画)を実現し、ブロックローテーションを定着させ、農林水産大臣賞を受賞した。今でも全国から視察は続いている。
 そんなモデル地区の元気なおじさんパワーも、お天気と、何より『国の猫の目農政』には勝てないのだとしみじみ思う。降り続く雨で、田んぼがぬかり大豆の播種ができないのだ。10日前までは連日みんなで自分のトラクターを持ち寄り、耕耘・施肥・土手の除草作業に精をだし、張り切っていたばかりだ。先輩の農家が頑張る姿は本当にたくましく、誇りである。大型トラクターと大豆収穫用のコンバインは補助事業で共同購入した。
 今の農業について考えるとき、米の減反政策を避けては通れない。国の減反政策が進められて、すでに30年以上が経過した。次々に手を変え、品を変え、様々な政策が打ち出されてきた。日本の主食である米も、あっという間に外米輸入の道が開かれた。1俵2万円以上していた米価も、“米の価格維持のために減反を!”という合い言葉で?今や1万4〜5000円までに値下げされた。
 真面目に地域の減反達成を担う大豆組合の先輩達は、大豆と麦価の大幅な値下げと、お天気には勝てないことを今痛感している。地域のブロックローテーション成功のために、反当りわずか2〜3万円の大豆収穫に汗しているのに…。
 転作奨励金制度を有効利用して、あちこちの農地を借り受け、大規模農業を展開してきた仲間もいる。国はこうした農家を優遇?した。しかし現実は…投資した機械代金や施設の返済の見通しが立っているとはとても思えない。今でも農家の“機械化貧乏”は常識である。
 そもそも農は“国の礎”であり、自給が大原則である。農家にとって、播種した作物を丹精込めて世話をし、収穫することはこの上ない喜びのはずである。種も播かない農家に1反歩8万円以上も奨励金を支払いながら、一方で外国の農産物を輸入していること自体、あまりにもおかしい。
 米の減反政策の、いわば集大成とも言える新しい米政策改革が決定されようとしている。その政策が本当に日本農業や食糧政策、そして農家のために生かされるのかどうか…その答はいずれ出されるはずだ。大好きな農業を守っていくために地域で何ができるのか…みんなで考え、行動に移していきたいと思う毎日である。 (茨城県大和村在住・農業) (野沢 博)
(2003.7.28)

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