農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
つくば山麓 野良だより

雨。久しぶりの農休日!

 秋、空を見上げると何百匹という秋茜の群れが飛び交う季節になった。一日中降り続く雨も、農家にとっては最高に“癒しのひと時”である。久々に部屋や夏物の衣類を片づけたり、本を読んだり、魚釣り、若者はパチンコ、デート? 等々…それぞれの思い思いにのんびり過ごせる至福の時だ。こんな気分は年に何度も味わえない。いつもいつも作業や出荷に追われ、雨が降っても雨合羽を着ながらの仕事を余儀なくされている。そして、こんな最中にも先月の相次ぐ台風で大被害を受け、今も復旧作業が続いている地域があることも忘れてはならないと思う…。折しも、世界のイチローが大リーグで、偉大なる記録を塗り替えてくれた。シーズン257安打を抜くのは実に84年ぶりだという。同じ日本人として、これほど誇りに思ったことはかつてない。

◆食といのちを考えた一日

 そして10月3日、雨にもかかわらず茨城県母親大会は1050人もの参加で大成功であったという。(以下、妻の「野良日誌」より〜)
 記念講演は料理研究家の小林カツ代さんで、私たち農村女性グループで昼食を用意させていただきました。茨城県内各地から、自分の生産物を使ったレンコン料理3種、栗おこわ、五目おこわ、きゅうり、らっきょう、ゴボウの漬け物、手作り豆腐で作ったがんもどき、青菜のおひたし、ミョウガの卵とじ、芋ようかん、黒豆かん、それに養豚している人は焼き豚(笑い!)、放し飼いの鶏の厚焼き卵、郷土料理のいわしの南蛮漬け…、それらを手作りの竹の食器に彩り良く盛りつけました。
 講演の第一声に、“こんな昼食をいただいたのは初めてです”と、喜んで報告していただいたことが何より嬉しかったです。小林さんは「食のいのち 人のいのち」というテーマで講演され、とりわけ人のいのちについては、第二次世界大戦終盤の原爆投下や現在のイラク戦争をあげて、「戦争で死んだ1人の人には、泣き悲しむ1人の母親が必ずいます。少しの犠牲で戦争を終えることができたというのは全く間違っている。1つの命は何にも代え難いもの、戦争そのものが大きな間違いです。そして戦争をしないことを誓った憲法9条を守ることが、日本にとって世界にとっていかに大切なことか。憲法9条を守ろうと多くの人に呼びかけたい」と話され、会場をうめたたくさんの母親たちは大きくうなずき、会場は拍手に包まれました。
 食のいのち、「収穫された時から食べ物は死へ向かうのではなく、生きようとしている。大根の葉っぱは一生懸命根っこから養分を吸い上げて生きようとしている。その食べ物たちを愛情こめてお料理したからといったって、必ずおいしいとは限らないんです。おいしい味はおいしい。おいしくないものはおいしくない。常に柔軟な感性で、呼吸そのもの、テンポよくお料理することです」…うーん。なるほど、なるほど!
 改めて、今の平和はたくさんの人が「どんな戦争もいやだ!しちゃいけない!」と思い続けることで、かろうじて守られているんだと思いました。
 戦火の中で農地が荒れ、乾いた茶色のイラクの大地を映像で見るたびに、緑に潤う豊かな田畑を耕せる私たちの幸せを思います。農作業に追われ、あくせくした毎日がいかに幸せなものであるか…雨の日の素敵な母親大会でした。追伸:ねえお父さん〜仕事に励みましょ!  (茨城県大和村在住 農業)

(2004.10.19)


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