農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
つくば山麓 野良だより

梅の咲かない梅まつり!

 弥生3月。例年であれば花盛りの我が家の梅の木も、今年はようやく蕾がふくらんで来たところだ。もちろん水戸の梅林も開園したのに花がない!(3月5日現在で二部咲きとか)気象庁によると、平年に比べ、暮れの12月は平均気温が2度も低く、実に49年振りの記録だったと言う。秋から冬にかけて本当に寒さがきつく、我が家の稼ぎがしらのほうれん草もなかなか育たず苦戦の連続だった。ところが、逆に桜の開花予想は早いという。同じバラ科でも花芽分化・休眠打破の仕組に大きな違いがあるのだろうか?

◆『農家崩壊の危機』

 小泉内閣が農業「構造改革」の目玉として推進している「品目横断的経営安定対策」をめぐって、今農村は大きく揺れている。関東の2毛作地帯の中心である、埼玉県や群馬県では、助成金対象を大規模農家や法人に絞るこの新政策によって、麦の手取りが4分の1に激減することから、農家の間に大きな不安の声がおこっていると言う。気象条件や面積、土壌の質によって米や麦、野菜などを組み合わせて作付けしてきたのは長い歴史、その地方の知恵と工夫のたまものである。小泉内閣の農産物輸入のいっそうの自由化を前提とした「競争力のない農業はつぶれてもかまわない」という“亡国農政”に、絶対に負ける訳にはいかない。
 今、各地で集落営農を立ち上げて生き残りを目指す動きが盛んであるが、大規模機械の新たな投資は農産物価格の低迷の中で大きな壁に突き当たるのは間違いない。地元で取れた小麦を使ったパンやうどん等を、学校給食や農協の直売所で扱う地産地消の動きも取り組まれつつある。

◆『坂東の歴史の重み』

 『平将門 上・中・下』海音寺 潮五郎の大作をやっと読み終えた。10世紀の頃、坂東の荒れ野を勇猛果敢に暴れ回った若者達を描いた長編歴史小説である。筑波山を中心とした、今でも残っているあちこちの地名が出てくる度に当時に思いを馳せて読んだ。歴史小説の主人公は、もっぱら“時の英雄”である。NHKの人気番組ではないが、『歴史はどのように動かされた!』のであろうか?
 本小説でも常に田植え・稲刈り…そして開墾等の場面が戦闘と共に描写され、当時の農民の生き様が繰り返し出てくる。私は平将門という人物が朝廷に刃向かい、貧困に喘ぐ庶民や領民の為に命を懸けて戦った物語も、それは大好きだが、その陰で何百、何千という一家の大黒柱や若者・女性達が犠牲になったという事の方が関心事だった。当時の農民や奴隷は、豪族の所有する荘園の中で日々の生活の糧を得ていたのだから当然のことかも知れない。流行病に対してもひたすら護摩を焚き、祈願する様子はあまりにも現代社会とはかけ離れていて滑稽にさえ見えるが、それが当時の常識であったのだろう。
 一千年以上も前から命がけで開墾し、守り継がれてきた関東平野の農地を絶対につぶす訳にはいかない。自治体や農協等が知恵を出し合い、消費者・住民・農家の共同の力で日本の農業を守って行かなければならない。(茨城県桜川市 農業 野沢博)

(2006.3.9)



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