農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
つくば山麓 野良だより

「残したい日本の風景!」
 「ホーホケキョ」澄みきったうぐいすのさえずりと共に目覚める爽やかな季節である。5月2日は八十八夜。昨日は各地で30度を越す7月中旬並みの猛暑に悩まされたが、今日は一転、4月中旬並みの低温で田んぼ仕事も早めに切り上げた。3カ月も季節が逆戻り! まさに“別れ霜”の季節である。ゴールデンウィークは田植え作業の真っ盛りと相場が決まっているが、それでも最後の1日は早じまいして、家族皆で『早苗振り』をするのが最高の連休の楽しみ方である。もっとも昔、手作業のみの田植え仕事で苦労した母親は、この季節「かえるの大合唱♪」で早起きさせられたのが嫁時代の一番嫌な思い出だとか!

◆中山間地の行方は?

 NHK番組「クローズアップ現代〜残したい日本の風景」を見た。海岸や河川の護岸がコンクリートに代わり、ローカル線の廃止や、山村の小学校の廃校等が、急速に進んでいる。ある山里の地区では35年前、30戸あったかやぶき屋根の民家が今はわずか7戸になり、いろりや薪といった昔ながらの風情もほとんど見られなくなったという。その要因はもちろん、過疎化や高齢化。そして永々と築き上げられてきた農村特有の“結い制度”の崩壊にあることは確かだ。こうした中で日本の原風景を、何とか残そうとする取り組みが各地で始まっている。かやぶき屋根の葺き替えのボランティア。耕作放棄地を蘇らせた真っ白なそばの花と地元のお年寄りの姿。温かくて、夢をたくさん与えてくれた番組ではあったが、残念ながら輸入農産物を平気でどんどん増やし、中山間地農業を蔑ろにする今の小泉政権下でどこまでその“ノスタルジー”が通用し、力を発揮しうるのか? 疑問に感じざるを得なかった。

◆不思議な出逢い!

 先日、しっとりとした雨に誘われて“わがむら”に帰ってきた「雨引の里と彫刻展」を見て回っていた(今年で10年・6回目を迎えた。2006年4月1日〜6月4日開催中。全国から集まった44名の彫刻家・芸術家の皆さんが、山の中や河川敷、そして田んぼの片隅や神社の中に、展開しているイベント)。お昼時、行く先々で何度もお会いする素敵な中年のご夫婦に、思わず声をかけてしまった。「我が家、すぐそこなのでお昼食べていきませんか? ちょうど手打ちそばがあるんです」。快諾を得た後、辛み大根のそばつゆと、庭で取りたてのこごみ、たらの芽、せり等、妻が天ぷらにして振る舞った。そして数日後、川崎市の河野さんご夫婦より嬉しいお礼のお手紙が届いた。「木の芽吹く今日この頃。先日は、思いがけず美味しい物をお腹一杯いただき、楽しい1日を過ごすことができました。…家に帰り万歩計を見ましたら、1万8000歩。田んぼの畦道・山の麓等をよく歩き久しぶりに心地よい運動ができました…とりあえず御礼まで」。あの時のとっても素敵な笑顔が忘れられない。ご夫婦もまた、今回44人の彫刻家の1人、金鉉淑さんの出展に関わったという。題名「between―064・漂う場の気配が私を誘う。ココでゆっくりと、みつめる時間がホシイと!」(茨城県桜川市在住 農業)

(2006.5.17)



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