農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム
つくば山麓 野良だより

本来の担い手確保とは!
 雨降り。久しぶりに山本一力著の股旅物を読んで気分転換した。現代の社会に無くなってしまった“温もり”を感じて、心が豊かになった。今日は家族皆、思い思いの休日を楽しんでいる。しかし農家にとっては本来のんびりできるはずの一時であるが、今年は、みんな年末を迎え重苦しい日々を送っている。いわゆる「豊作貧乏!」。大きな台風に見舞われることなく、気温が高かったため、白菜やキャベツ、大根等の大型野菜が順調に育って大暴落。箱代と手数料を引いたら何にも残らない。丹誠込めた野菜をトラクターでつぶしての出荷調整。消費者は良いかもしれないが、野菜で生計を立てている専業農家にとってはたまったものではない。「忘年会をやる気力も出ない。暮れの支払いは…?」と仲間が嘆いている。

◆ささやかな抵抗!

 そんな中、我が家では毎晩、鍋物。鱈、牡蛎、豚、鶏肉…等など、メインの中味を取り換えただけの農家にしかできない最高の贅沢を満喫している。年々下がる一方の米価。大暴落の野菜作り。何が「担い手育成」だと言いたい! 農業後継者になり、結婚を約束した相手もいる我が家の長男(24歳)には、せめてお金の心配だけはさせたくない。そうでないと、農家に嫁さんは来ない!? 安心して農業を営める価格補償対策や輸入農産物の規制がない限り、これからの農家経営は大きな壁にぶちあたるのは明らかだ。
 そんな息子がぽつりと一言!「今の世の中、狂ってるよね!」いじめ、自殺、そして何より、政治の腐敗! 毎日のように報じられる談合・汚職、郵政選挙の後始末問題等。連日のマスコミの報道を見ても、腹の立つことばかり! どこかの「改革」を唱えて華々しく就任した総理大臣誕生以降、ますますそれが顕著になったと私は思っている。
 先日、私の集落で「集落営農組合設立総会」が開催された。JA北つくば管内では33地区、桜川市での設立は8地区という。10回以上の準備会を重ねての設立ではあるが、果たしてどれだけの人がこの“重み”を感じているのだろうか。60代、70代の先輩達が現役で頑張っている姿は、同じ農民として心から誇りに思う。しかし農協・行政頼みの組合ではとても通用しない。私は総会の場で質問をした。「経理の一元化と簡単に言われるが、誰がそれをできるのか。売り先も資材購入先もまちまちで? 農協や行政は今後どのように支援していくのか?」と。JA役員の回答いわく「12月中にはマニュアルができあがるはずです。私共も何せ初めての試みなんで…!売り先・資材も農協に統一しなければ、無理ですよねえ」。本気で地域農業を担っていこうとする若者が核になっている組織なら別だが、従来の「御上におんぶに抱っこ型」では、もう先が見えている。梶井功先生が11月10日号の本紙で書かれているように、農水省や農協の幹部の皆さんが本当の農家の実態を知らないで、机上の空論をいくら研究されても、日本の農業の力は衰退するばかりだ!(茨城県桜川市在住 農業)

(2006.12.1)



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