農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 昔々その 昔

福は内鬼は外
挿絵: 種田英幸
文: 種田庸宥 日本福祉大学客員教授



福は内 鬼は外

福は内 鬼は外
ひいらぎで鼻突きゃ
いわしゃ くさいくさい
(高知)

かごめかごめ

かごめ かごめ
かごの中の鳥は
いついつ寝やる
夜明けの晩に
つるつる すべった
後ろの正面 だあれ
(高知)


鬼さん こっち

鬼さんこっち 手のなる方へ
ここまできたら 甘酒しんじょ

あいたあいた 鬼さんこっち
手のなる方へ
(高知)

鬼のこんまに

鬼のこんまに(こない間に)
べべ(着物)一つ洗いましょ
鬼のこんまに
着物一枚 ぼうじゃぼじゃ
(高知)


鬼婿入り

田に水がのうてね、ほんでんうんと困ったやと。ほしたところが、毎年毎年水がないんやてね。不作なんやて。ほしたところが、鬼が出てきてな、
「おまえ、なんで困っとるか」
いうのやと。ほしたところが、お父さんがね、
「わしゃ水がのうて困っとろんや」。
ほしたら鬼がな、
「わしのいうことを聞いてくれたらな、おまえに田に水を出してやる」
いうやてね。
「なんでも、おまえのいうことは聞いてやるからな、水を出してくれ」
いうて、ほて鬼がね、
「お福さんを嫁さんにくれたら、水出したる」
いうんやと。ほやけど、水がないもんやけにな、
「福を嫁さんにやるから、水を出してくれ」
ていうのやと。ほしたら、鬼がな、鉄の棒持っとるやろ、あれで、コンコンコンコンたたいたら、どんどんどんどん出だしたんやて。ほしたところが、
「水を出してやったけに、娘をくれ」
ていうのやて。こりゃ、えらいことをしたと思うたけんど、しょうがないだろ。家へ帰って娘にいうたら、
「それやったら(それだったら)、しゃないけに(しょうがないから)、行く」
てな、
「ほのかわり、わたしがいつ帰ってくるやわからんけに、いつでも豆をいって出いて待っといてくれ。」
いうて行くねやて。ほして鬼のはた(そば)へ行て、今日(きょう)、おい出たろ、今日おい出たろ、思うても出る間がないのやと、鬼がきっちり監視して。ほしたところが、鬼が寝ていたから、この間にと思うて、
「うちへ帰ろ」
思うて走って出ると、後ろ見たら鬼が追いまわして来るんやと。ほして、お福さんが走ってな、ほいでうちへかけこんだやと。ほで、かけこんだら、
「早うお父さん、豆まいてくれ」
いうたんやと。ほしたところがお父さんは、そら来たというので、
「鬼は外、福は内」
いうて豆まいたところが、鬼はよう入らんで帰ってしもうた。そいでお正月の豆まきには、
「鬼は外、福は内」
て、いうのやと。
(採話 徳島 田中時子)


節分はお正月、豆は?

 鬼ごっこと節分の、わらべうたと昔話です。「鬼さこっち」は目かくし鬼遊び歌、「鬼のこんまに(来ない間に)」はつかまえ鬼の鬼をはやさからかい歌、「かごめ」は人当て鬼遊び歌、「いついつ出やる」が、土佐では「寝やる」に変わっています。
 「福は内、鬼は外」、とげとげした柊の葉で目を刺せばつぶれ、鰯の臭いは吐き気がするので、鬼は嫌いです。それで、どこの家でも、節分には、戸口に、柊の葉と鰯の頭で、悪霊を払うのです。
 昔話「鬼婿入り」の豆まきは、現在は2月3日の行事ですが、旧暦では大晦日から元日にかけての話でした。
 なぜ、鬼に豆なのか。大豆は女の尻から生まれ、芽も股芽(まめ)ともいいました。女性を象徴する言葉で、ここから、豆には弱い鬼(男?)の話が生まれたのです。
 ついこの間まで、節分はお正月のことだったことを思い出しましょう。
 農協協会新春の集いに出席してくれた、画家種田英幸さんは、飲食もせず、参加者の似顔絵を描いてくれました。唯一残った、編集部Nさんの顔を紹介します。

(2005.2.24)

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