こいのぼり
近藤宮子 作詩
やねより高い こいのぼり
大きい まごいは
お父さん
小さい ひごいは
子どもたち
おもしろそうに 泳いでる
(昭和6年)
坊さんかんざし
むかしむかしのお話です。
土佐の高知の五台山竹林寺の近くに、いかけ屋の娘で、お馬さんというそれは美しい娘が住んでおりました。
お馬さんは、竹林寺の脇坊に住む純信という坊さんと、相思相愛の恋仲になりました。
一方、竹林寺に住む慶全という坊さんも、お馬さんに恋をしていました。慶全はお馬さんの気を引こうと、こっそり寺をぬけだし、はりやま橋の小間物屋で、かんざしを買い求めて、お馬さんに贈りました。
ところが、お馬さんは慶全が話しかけても見向きもしませんでした。
そこで慶全は純信を逆うらみして、
「坊さんのくせに、女にかんざしを買うて贈るなんて、純信は破戒僧だ」
と、自分のしたことを純信におきかえていいふらしました。
このために、お馬さんと純信のうわさは、またたくまに城下に広がり、二人はたえかねて関所破りまでして、恋の逃避行をはかりました。しかし、となりの国讃岐のこんぴらさんのところで捕まり、高知へ送り返され、純信は伊予へ追放されました。
土佐の高知のはりまや橋で
坊さん かんざし 買うを見た
このように唱われる“よさこい節”は、逆うらみの慶全を唱ったものですが、今では純信とこんがらがって理解している人も多いようです。
龍の化身と禁断の恋
端午の節句の五色の魔除けの“のぼり”が“吹き流し”へ変わり、その下に“こいのぼり”がつけられるようになり、病魔や悪霊さえ寄せつけない龍の化身、鯉が大空を舞うことで、元々は豊作祈願だった行事に、健康と出世の願いがつけ加えられたのです。
「よさこい節」は、半世紀近く前のペギー葉山「南国土佐を後にして」と、最近の「ヨサコイソーラン踊り」で、日本中に知られました。
“よさこい”とは、“夜おいで”と女性が男性を誘うことばだということを知っている人は、高知でも少なくなりました。真言宗の名刹竹林寺ともなれば、恋などご法度は当然です。純信お馬の話は実話です。竹林寺は今は高知の文化活動の拠点の1つで、女性が大活躍しています。
画家種田英幸氏は、土佐の高知の方ですから、「よさこい」となると、自分の家の庭の話です。さて、どんな絵を見せてもらえるか、楽しみです。
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