鳩
ぽっ ぽっ ぽっ、
鳩ぽっぽ
豆がほしいか
そら やるぞ
みんなで 仲善く
食べに 来い
「尋常小学校唱歌(一)」
替え歌
ぽっ ぽっ ぽっ
鳩ぽっぽ
豆がほしいか
やらねえぞ
世の中 そんなに
甘く ない
狸の110番
海辺まで山が迫っている山形の庄内浜では段々田んぼを作ってきました。減反政策で米は作ってはならんということになり、西瓜やメロンに切りかえると、喜んだのは狸です。
「さあ、明日はメロンを取り入れだ」
などと話していると、ちゃんと聞いているらしく、次の日畑へ行ってみると、すっかり食われています。
じいさまとばあさまは相談して、狸をおどかそうと、カーバイトランプを竿の先につるして畑に立てました。
ところがこの海岸は密航船が多く、
「あやしい船を見かけたら、110番して下さい」「あやしい合図をしている者を見かけたら、110番を」
との立札があちこちに立っています。
ある夜、110番に通報です。
「どこそこの段々畑で、沖の密航船に合図を送っているもんがある」
それっと警官隊が段々畑にしのびよると、竿の先にランプが揺れている。畑の持ち主は誰だとなって、じいさまとばあさまは、油をしぼられました。
警官が帰った後で、じいさまはどなりました。
「誰じゃい。110番したもんは!」
するとばあさまが言いました。
「そりゃ、狸だべ」
減反政策と密航船と狸
皆さんもよく歌った「鳩ぽっぽ」。この替え歌を紹介した、児童文学者鳥越信氏は「世の中そんなに甘くない」という発想は、いかにもいわゆる「現代っ子」や新人類のいいそうなことだから、この替え歌は、戦後1960年以後に生まれたものではないか、と書いています。
寅さんシリーズを終えた山田洋次監督は、「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」で、東北の小藩海坂を描いています。原作者藤沢周平は、自分の育った山形県庄内地方をモデルにしています。戦後間もなく故郷を出た藤沢には、庄内の戦後の変化はどこまで見えていたでしょうか。
村に住むじいさん、ばあさんたちは、減反政策で廃村化していく村を、こんな笑い話に仕上げました。
この話が面白くて、何度も庄内地方に足を運んだ作家松谷みよ子氏は、こう書いています。(「現代の民話」)“農民が自らの田に米をつくることができないという不思議な状況。そこにやはり、これも人間の文明に追われれている狸。
「110番したのは、そりゃ狸だべ」
その一言に、何とも切なく、人間の温もりを感じるのである”
50年前、上京して作家になる前の藤沢氏(小菅留治氏)と知り合い、級友の一人は仲人までしてもらったのですが、その彼に現在の庄内についての感想を聞いてみたいものです。 |