農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 昔々その 昔

蛇とも仲良く
文: 種田庸宥 日本福祉大学客員教授
挿絵: 種田英幸



砂糖締め唄 (民謡 香川)

ねむた眼をして 朝とに起きて
 しめこする身の かわいさよ

しめこさん達は 大名の暮らし
 火鉢かかえて お手あぶる

牛もえらかろ しめこさんもえらい
 四番返しの かす締めに

灼いた殿御に 砂糖締めさせて
 東横風 寒かろに

讃岐砂糖締め 乞食より劣り
 乞食夜寝て 昼稼ぐ
 しめこ昼寝て 夜稼ぐ

蛇をからかうと

 むかしむかし、男がたきぎをとりに、西の谷へ行きました。
 その日は、たきぎがよく取れ、背負いかごは、すぐにいっぱいになりました。
 男は、
「どれ、ここらで、一服しよう」
 と、倒れていた大きな松の木に、腰をおろしました。するとそのとき、小さな蛇が、男の足もとへよってきました。
 蛇はいたずらをするでもなく、むしろ男の足にじゃれついてくるのです。男は、
「ずいぶんと、なれなれしい蛇もいたもんだ」
 と、ちょっとふしぎに思いましたが、彼は蛇がきらいでしたので、追い払う手はずはないものかと考えました。
 「そうだ。蛇は煙草のヤニが大の苦手じゃと、おじいさんがいってたな」
 男はすぐに煙草のヤニを、蛇にくっつけました。すると、蛇はたまらず、谷底へ転がり落ちてしまいました。男は、
「やれ、ひと安心」
 と、のんびり、一服つけました。
 そのときです。突然、座っていた松の木がゆれだしました。なんと、それは松の木ではなく、見上げるほどの大蛇だったのです。
 男はびっくりぎょうてん。山を転がるようにして、家に逃げ帰りました。
 あのとき、小さな蛇がすりよってきたのは、実は親蛇にじゃれついていたのです。
 そんなことがあってから、男は山へ入っても、生き物にいたずらはしなくなったそうです。

若者たちが集まって

 現在、黒砂糖は沖縄産しか眼につきませんが、半世紀前までは、四国九州の各地で砂糖キビが作られました。そして、牛にひかせたり、戦後はモーターを使って汁をしぼり、黒砂糖を煮つめました。これは農家の、すぐれた現金収入の商品でした。
 砂糖工場には、村中の若者が集まりましたから、彼らの交流の場となりました。土佐の私の村では、明治初期、自由民権の学習の場や新しい人形劇のケイコ場にもなったのです。
 土蔵や屋根には大きな蛇がいました。でも、悪いことはしないのに、誰も彼らと仲良くしませんでした。私は保育の授業で、動物園で蛇と仲良くしている写真をとってきたら良い点をあげるというのですが、毎回クラスで1人か2人です。

(2006.6.19)

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