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コラム | 今村奈良臣の「地域農業活性化塾」 |
農のある町づくり
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「新しい村」というのが、埼玉県宮代町にある。水田もあれば果樹園、ハーブ園、市民農園、育苗施設、「農の家」、そして直売所、さらに通称山崎山と呼ばれる雑木平地林まで含めて、ざっと20ヘクタールにも及ぶ広大な農場の姿をもった村である。
この「新しい村」は東京都心からでも僅かの時間で行ける所にある。地下鉄日比谷線の終点に東武動物公園駅があるが、そこで下車して徒歩10分、東武動物公園に隣接し、宮代町の中心部に立地している。 この「新しい村」の設立は、平成9年に宮代町が策定した「農のある町づくり計画」に発している。かつて昭和30年に合併して宮代町ができた頃は人口1万人であったが、現在は3万5000人を超え東京のベッドタウンとなり、農家世帯の割合も6%に激減した。こうした中で、数度にわたる町民調査の中から、今後も宮代町に住み続けたい、という積極的な理由に多くの町民が自然環境の良さをあげ、農地や水や緑を残し維持・保全すべきという意見が寄せられたという。こうした意見を踏まえて「農のあるまちづくり計画」を策定した。その目玉の1つが「新しい村」であり、町の第三セクターとして「有限会社新しい村」を設立し、運営に当たらせている。 そこで「新しい村」の優れた特徴を簡潔に紹介しよう。 13ヘクタールの農場。「新しい村」は13ヘクタールのまとまった農場となっており、水田、果樹園(巨峰、いちじく、ブルーベリーなど)、ハーブ園、農の家、直売所、市民農園など多彩であり、施設用地は町が買い上げたが、他は農地所有者から借り入れている。 集落農場「結(ゆい)の里」。いわゆる市民農園で参加希望者に30一単位で貸付けているが、ここの特長は「五人組」といって5人単位で協力して耕作することが条件となっている。脱落者がでないように、また技術向上など協力するシステムにきらりとした智恵が光っている。 「農」の家。農場のほぼ中心にあり、集会所、研修所などを兼ねて来場者のいこいの場となっている。 育苗施設。水稲の育苗を1万箱おこなっている。10アール20箱とすれば約50ヘクタール分であり、育苗のできない農家へ有償配布し、後作には多様な野菜などを栽培している。 ほっつけ水田。八代将軍吉宗の時代に開田された一種の文化遺産である。強湛水湿田であったのを町が買い上げ改良し、教育用の水田として活用している。水路を掘り下げメダカやホタルの住める環境を作り、掘り上げた土を盛って乾田にして、隣接の笠原小学校(校舎が極めてユニークですばらしい。一見の価値あり)の児童をはじめ町内の生徒の総合学習の場となっている。 森の市場「結(ゆい)」。「新しい村」の中にある直売所である。農場内でとれたものはもちろん、町内の生産者の生産した農産物、特産物、加工品が出品される。昼頃訪ねたときには大半が売り切れていた。 森の工房、森のカフェ。商工会とも連携し、森の工房では地元産の小麦で焼いたパンやケーキが作られ、森のカフェはいこいの場である。「結」と「カフェ」と「工房」は1つのユニークな設計の建物の中にあり熱気を感じた。 以上のような活動は、「有限会社新しい村」の運営を基盤に行われており、農業経験者を中心に雇用された人々の手によって行われているものの、多数のボランティアの支えによって成り立っている。 山崎山雑木平地林。この農場と一体となるように、県が買い上げ保存林に指定した5ヘクタールに及ぶ平地林があるが、四季を通じて町民のいこいの森となっている。ほとんど手を加えていないところがよい。是非一度訪ねてほしい。 (2004.4.7) |
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