前回に引き続いて、農産物直売所に関するJA―IT研究会第14回公開研究会における報告、討議、提案などについて紹介しよう。
JA―IT研究会は周知のように、私が代表をつとめ、4年前から農協の営農・経済事業の改革に焦点を当て、その改革路線についての自主的研究を積み重ねてきており、全国から60JAを超える有力JAやJA全国連、流通関係者、消費者団体、研究者等の参加のもとに研究、実践が進められてきた。第14回公開研究会は100人をはるかに超える参会者で熱気に充ちていた。
まず黒澤賢治副代表から直売所のあり方について次のような問題提起がなされた。(1)地産地消の中核施設として「直売所」の機能コーディネートがなされているか、特に利用者最適の「周年供給体制」が確立できているか、生産体制を支える「組織化」が販売規模とマッチングしているか、(2)本来の特性である「安心・安全・安価・安定」をどうパフォーマンスしているか、特に地域特性が商品構成に生かされているか、安全・安心の担保が希薄になっていないか、商品安定化に向けた「管内生産体系」「JA間産地連携」にどう対処しているか、(3)「直売所」経営をJAとしてどう位置づけているか、特に地域のランドマーク・トレーニングセンター等の機能は生かされているか、Aコープの失敗の教訓を運営手法にいかに生かしているか、(4)全国のJA直売所が連携しローコスト生鮮供給構想を目指そうではないか、特にJA間連携をコーディネートする拠点機能が今後の大きな成長の鍵を握る、活用可能なノウハウを蓄積しいかに共有し地域の直売所に生かすか、大都市近郊・高齢化住宅地は今後のターゲットポイントとして宝の山ではないか、などを内容とする包括的な問題提起がなされた。この問題提起されたそれぞれの課題をいかに解決していくかということがJAの当面する課題であることが判ろう。
これを受けて小柴有理江さん(金沢大学研究員)が基調報告を行った。直売所に関する最近の全国動向や特徴は前回紹介したサミットにおける田中報告とほぼ同じであるので割愛する。農協が開設主体となっている直売所の特徴は次の通りである。開設数518JA、2008か所、1JA当たり約4か所、運営主体はJA6割、生産者組織1.5割、担当部署は営農・販売が5割、生活が2割、売り場面積100m2以上が4割、登録出荷者数100人以上が5割、年間販売額1億円以上が4割、当初事業費は7割が自己資金。
ついでJA直売所の集客構造の特徴についてみると次のような特徴がみられる。(1)7割が郊外に立地、(2)国道、県道などの主要幹線道路沿いに立地、(3)多くの直売所が併設施設を持つ、(4)郊外の大型店舗により広範囲から集客を図る。しかし、競争はますます激化してきておりその特徴は次の通りである。(1)過去5年間で売上げが増加したもの5割、横ばい3割、減少2割、(2)規模の小さい直売所ほど売上げが減少傾向、(3)競争は直売所間だけでなくスーパー、コンビニとの競争激化が顕著となってきている。以上のような動向を踏まえて直売所の課題として次の点が強調された。消費者(お客)が求めているのは、(1)品質・鮮度、(2)安全・安心、(3)価格、(4)生産者の顔が分かる、などの点にある。そのためには当然のことであるが、(1)品質管理、安全・安心を徹底すること、(2)品揃えをきちんとすること、特に地域ブランドの確立、(3)生産者の組織化を徹底する、(4)ハウス栽培なども取り入れ周年供給体制の確立、(5)JA間連携づくり、などが指摘された。
さて以上のような問題点と課題の提起の上で次のような基本方向に沿った改革提案があった。(1)運営委員会など新たな販売戦略を十分発揮できる生産者組織や運営の仕組みづくりが重要、(2)直売所の運営を改革し消費者と生産者をつなぐ役割を果たしている直売所が売上げを伸ばしている、(3)短期的売上だけでなく長期的な取組みと発展のためには人材育成が不可欠である、(4)直売所を核に地域農業活性化に全力をあげる、(5)農産物だけでなく人材(生産者のみでなく消費者も)も含めた地域資源の掘り起こしと活用が基本問題である。
以上の報告をふまえ、JA甘楽富岡食彩館運営委員会副委員長の鶴田チョウ子さん、JA山武郡市「緑の風部会」部会長の石井清一さん、JAグリーン近江「八日市野菜村」村長の南治恵さん、JA三次アンテナショップ生産連結協議会会長の田村三千夫さんをパネラーに吉田俊幸副代表の司会のもとに、活発なパネルディスカッションとフロアーからの質問、討議が行われたが、紙数の制約で残念ながら割愛せざるを得ない。しかし、その討議の内容は先に紹介した基調報告などにおおむねつくされていると思う。
最後に私が強調しておきたいことは、直売所が成功を収めるには女性パワーの発揮が重要であること、また農業に精通した高齢技能者に一段と頑張っていただき病院や特養ホームなどのお世話にならず、「ピンピンコロリ」が一番幸せだと思われるような直売所になってほしいということである。