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コラム 今村奈良臣の「地域農業活性化塾」 |
Boys'be
aggressive!(続)
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入善町の16人の青年たちに会った瞬間、私は強烈な衝撃を受けた。それを一言で表現すると、ひと昔前に出会った農村青年たちとは顔かたちや表情が、全くと言ってよいほどに違っているということであった。役者のような顔、芸術家のような顔、プロ野球かサッカーの選手のような顔、青年実業家とでも言うような顔、そして共通してたくましい物怖じしない個性に充ちた顔付きであった。どういう表情であったかは10月10日付本紙1面の16人の顔写真を読者の皆さんはもう一度眺めていただきたいと思う(記事参照)。
青年たち一人ひとりが自己紹介していく中で、その顔付きと表情から私が読み取ったことは、「自ら選んだ農業経営者の道は、色々と苦しい時もあるが、すばらしい仕事だ」と自信に裏打ちされていたように痛感した。 ◆多様性の中に強靱な活力が 私はかねてより「多様性の中にこそ真に強靱な活力が育まれる。画一化の中からは弱体性しか生まれてこない」と固く信じてきた。入善町の16人の「一騎当千」の青年たちの話を聞いてみたら、その活動の場は非常に多彩であった。米、麦、大豆を中心に土地利用型の大規模法人経営の経営者。集落営農を担いつつ行く行くは大規模経営を目指す青年。非農家出身だが農業に魅力を覚え、農業への参入を目指して今は法人の従業員になって技術と経営の研修に打ち込んでいる青年。日本有数の種もみ産地である入善町で種もみ生産の維持・拡大を目指す青年。伝統的チューリップ産地をさらに維持・発展させようと打ち込む青年。花生産の少ない中でポインセチアをはじめ花生産おこしを推進する青年。さらに和牛肥育に取り組み、耕畜連携も目指す青年。このように実に多彩であった。 ◆平成時代の「結(ゆ)い」 私は「多様性を生かすのが自主的、主体的に作られたネットワークである」とこれまで主張してきた。入善町の青年たちがこのように異業態でありながらも、それぞれの生き方をお互いに認め合い、励まし合い、智恵の交流をすすめているのも、すばらしいネットワークであるが、この入善町では、さらにすごいことをしていた。一言で表現すれば「平成時代の結い」である。すなわち、もし農繁期、例えば米の収穫時に、コンバインが故障した、急病人が出た、緊急の用件ができて刈り取りできない、というような事態が発生した時には、たちどころにグループのメンバーがコンバイン持ちで、その人の圃場に集まり一挙に作業をこなしてしまう。こういうことをこれまで何度か経験してきたという。「その費用の決済はどうなるのか」と気になったので聞いてみると、その晩一杯ワーッと飲んで終わりにするという。いちいち決済はしないという。常にこういう危機にはメンバーの誰もが直面する可能性があるので「お互い様」だと言うのである。これを一言で表現すれば昔からあった「ユイ」の平成版と言うことができると痛感した。この青年グループのリーダーでもあった、矢木龍一JA全青協会長や森下和紀県青協会長が心おきなく活動できているのも、こういう背景と基盤があったからだと納得できた。 ◆at your own risk かねてより私は全国各地で農民塾、村づくり塾を興し、塾長として活動してきたが、その中で、青年たちに“at your own risk”の精神を説いてきた。日本語であえて表現すると「挑戦と自己責任の原則」ということになる。親や行政などから指導されたり命令されたり指示されたから農業をやろう、農業を継ごうというのではなく、自らすぐれた職業として、自らの責任のもとに農業経営者という道を選択しようではないかということである。それは新しい地域農業の将来像ならびに自らの農業経営を自らの責任と判断で、自らの全責任のもとで選択するということである。 ◆競争的共存 こういう若者の集団がいるということが、入善町農業の将来を明るいものにしているのだと思う。また、10月10日付の本紙にも書いておいたように、こういう青年たちの活発な活動が反作用として、女性農業機械士会アムロンや高齢女性による玉女の会というような他の分野におけるすぐれた活発な活動をさらに引き起こしているように思われた。
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(2006.12.19) |
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