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コラム 今村奈良臣の「地域農業活性化塾」 |
共益の追求を通して私益と公益の極大化をはかる
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農事組合法人ファーム・おだというのが、広島県東広島市旧河内町小田地区(大字)にある。広島県は集落農業法人数では全国トップの84を誇るが、その中でも経営規模は最大で82ha(参加戸数128戸)という大規模経営である。しかし、ファーム・おだのすぐれたところは、単に経営規模が大きいというだけではなく、その設立の背景と推進力、構想力に非常にすぐれたものをもっているところにある。 ◆廃校の危機をバネに 02年3月、河内町立小田小学校が廃校になることが決定された。そのうえに05年2月には河内町は東広島市に吸収合併されることも決定され、公民館、保育所、診療所など地域の公共施設なども整理統合される方針が打ち出された。こうした地域社会の激変が予測される中で、自らの地域は自らの力で守っていこうという地域住民の総意の中で03年10月5日に「共和の郷おだ」という自治組織の旗揚げが行われた。13集落、236戸、681人という校区全体をカバーする自治組織が生まれたのである。もともと「21世紀を考える会」などという旧町役場主導の組織はあったが、東広島市に合併統合されること、小学校が廃校されることを契機に地域自治組織を住民自らの総意として創設したのである。そこで地域住民の心の拠り所でもあった廃校となる小学校を改造して公民館を置き、会議室、簡易宿泊施設なども設け、「共和の郷おだ」の拠点として多面的な活動が始まった。 ◆農業を生き返らせよう 小田地区は水や緑は豊かで白龍湖や史的遺産も多く「広島の遠野」とも呼ばれ、グリーン・ツーリズムの推進もすすめられることになった。 ◆一生懸命やれば知恵がでる 「農事組合法人ファーム・おだ」は05年11月12日に設立された。小田地区の農家戸数は167戸農地面積は127haであるが、そのうち128戸、82haが創設された法人に参加した。加入率は77%という高さであるが、組合の耕地図でみるかぎり圃場整備された水田が連坦して組織されていることが判る。具体的に農事組合法人方式による集落営農の方向が提案され設立に至るまでの7カ月間の記録をみると、公式会合だけで実に50回の話し合いと討議が行われていることが判る。 ◆埋もれた資源を活かす 「ファーム・おだ」は埋もれた廃棄されるような資源を実に巧みに活かしている。まず、法人の事務所は統合され空屋になったJA支所を借りて活用している。さらに昔のたばこ乾燥施設は若干修理され、いまでは大豆乾燥場に変身していた。さらに機械格納庫や育苗施設も古くからあった施設の改良ですませている。 ◆「共益の追求」を広めよう いずれにしても、私がかねてより提起してきた「共益の追求を通して私益と公益の極大化をはかる」ということをこの地域は実践してきたのである。「共和の郷おだ」の活動は小田地区全体の公益の充実をもたらしているし、「農事組合法人ファーム・おだ」は協同組織として集落営農を推進することを通して参加農家の私益を増大させるのみでなく、農地、水などの諸資源の維持、管理を行うことにより公益の増大に寄与しているのである。全国各地域の皆さんも小田地区の構想と実践に学んでもらいたいと切に願う。
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(2007.2.20) |
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