パラグアイは、現在、大豆の大産地であり、FAO統計によるとその輸出量はアメリカ、ブラジル、アルゼンチンに次いで世界第4位にランクされています。
品質も優れ、世界市場での評価も高いのですが、特筆すべきはパラグアイ政府の方針で、非遺伝子組換え大豆の栽培が奨励されていることです。
小麦、トウモロコシ、大豆など主要畑作物の遺伝子組換え(GMO)品種の生産が世界中で拡大傾向にあり、食品の安全性志向からヨーロッパや日本で大きな問題になっています。南米においても、ブラジルやアルゼンチンではGMO大豆が相当普及しているようです。パラグアイは前大統領(ゴンザレス氏)に引き続き、現ドゥアルテ大統領も非遺伝子組換え大豆の生産を奨励しており、また、日系農協中央会やドイツなどヨーロッパ系農協連合会(フェコプロド)も政府の指導のもとで非遺伝子組換え大豆の栽培を推進しています。
南米、とくにパラグアイの大豆栽培の最大の特徴は、全面的な不耕起栽培方式にあります。70年代後半からトラクターやコンバインなど大型農業機械の普及と相俟って、不耕起栽培技術が効果をあげ、今日の大豆生産の成功を導くことになりました。この成功の陰にはイグアス農協管内の先進的農家の努力とともに、JICAパラグアイ農業総合試験場の研究成果が存在しました。試験場で育成に成功したアウロラ品種もこの成功に大きく寄与しました。
イグアス移住地は、1982年に大雨による土壌流亡を防ぎ、土壌保全を図る目的で不耕起栽培が導入されました。耕起と整地作業が省略され生産性が向上したばかりか、適期播種が可能になりました。現在、イグアスの大豆栽培は、ほぼ全面的に不耕起栽培方式で行われ、政府から「パラグアイ不耕起栽培発祥の地」として認定されています。
◆パラグアイ協同組合ベスト5
パラグアイには、80以上の農協が活動しており、その主力はドイツ系ですが、イグアス農協は全国第5位の経済力を誇っています。
1961年、14名の移住者によって任意組合の「イグアス農業協同組合」が設立され、幾多の苦難を克服して現在の81名の農協になりました。管内の作付面積は、大豆1万8000ヘクタール、小麦7000ヘクタールで、収量は、大豆5万4000トン、小麦1万4000トンという大産地です。貯蔵用サイロ(3万7000トン)、種子用サイロ(3000トン)、小麦製粉工場用サイロ(1万3000トン)の設備をもち、小麦の付加価値増進のためにヨーロッパの機械を導入した製粉工場(60トン/h)を設置しています。
◆非遺伝子組換え大豆を生産
いま、南米でも遺伝子組換え大豆の栽培が大勢になりましたが、イグアス農協では、消費者の食の安全・安心を求める気持に応えるためNON―GMO大豆の栽培を続ける農家が大勢います。イグアスの大豆農家の熱意に、日本の豆腐業界の注目が集まっているのもうなずけるでしょう。
井上幸雄組合長は、「高蛋白で糖分が多く油分が少ない、豆腐にしたら美味しい大豆」と自信をもって生産指導に当たっています。副組合長の堤広行さんは、東京農業大学を卒業して移住した一世で組合長の経験もある大規模農業経営者です。この夏は、JICAの農協幹部研修で来日します。380ヘクタールの畑作を切り盛りしている久保田洋史さんは、東京農大OBで元日系農協中央会の会長として、日系組合だけでなくパラグアイ全土の農協運動の発展に貢献しています。
若いリーダーとして福井一朗さん(二世・組合長経験者)は、大型大豆栽培農家で、地域のパラグアイ人農家の指導に尽力しています。当地においてマカダミアナッツを導入し、栽培普及の牽引車になっているのが窪前勇元組合長、豪放な性格で面倒見のいい指導者です。これから若い力の台頭が大いに期待される農協です。
(NPO法人国際開発フロンティア機構会長 山内偉生) (2004.7.16)
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