農業協同組合新聞 JACOM
   

コラム 日系農協の底力を見た!(6)

農協が自国の経済に大きな貢献



 パラグアイ国立協同組合院の「2000年度協同組合センサス」によれば、この国には、556の協同組合があります。組合員数は人口の10%にあたる53万5000人で、その経済活動の実績は国民総生産の15%を占めています。信用組合が多い実態なので分類が難しいのですが、農協(生産協同組合)として活動しているのは80組合。その主力は、ドイツ、ロシア、ポーランドなどヨーロッパ系で、特にドイツ系の組合は、いずれも強力な存在です。日系のイグアス、ピラポ、ラ・パスの3農協も、大豆生産の増大で事業実績が向上し同国の経済に大きく貢献しています。
 今回は、パラグアイでベスト5に入る組合の中から、ドイツ系農協とパラグアイ人主体の農協を紹介しましょう。

◆酪農製品市場を握るノイランド農協

 まず、ドイツ系「ノイランド」農協です。ノイランドとは、ドイツ語で処女地という意味です。パラグアイの北西部のチャコ大平原にある酪農が主体の組合で、同じチャコ地方にある2つのドイツ系農協と助け合いながら、牛乳や酪農製品を生産し、パラグアイの市場を支配しています。管内面積は香川県より大きい20万5000ヘクタール、耕作面積は13万ヘクタール(うち牧草地12万ヘクタール)、牛乳とバター、チーズ、ヨーグルトなど酪農製品が主な生産物です。
 1922年に、ドイツ系カナダ人7455人が入植し、乾燥地帯の厳しい環境で、酪農を定着させ移住地を確立しました。その背景には、同じプロテスタント宗派(戒律の厳しいメノ派)に属するという信仰の絆があったのです。その後、同じ宗派のロシア人も参加し、現在は、約2万5000人のメノニートが定住し、普段は、ドイツ語を使用しています。組合長はハインリッヒ・ダイクさん(60歳)、参事がウイリー・フランツさん(42歳)で、組合員600人、職員150人とともに、地域経済発展のために努力しています。私が、最初に訪問したときに、若い女性職員が「グーテン・モルゲン」と挨拶してくれたことが極めて印象的でした。内科、小児科、外科など入院設備を有する病院、老人ホームや小中学校、高等学校も経営しています。祖国ドイツを手本にした、徹底した教育指導事業を実施しています。治安の維持も、農協の重要な役割のひとつというのは興味深いでしょう。

◆パラグアイ人による大規模農協ウニダス

 コロニアス・ウニダス農協は、パラグアイの東南部のイタプア県にあり、管内面積16万ヘクタール、組合員2900人の大規模農協です。こちらはパラグアイ人主体ですが、日系組合員も約60名加入し、役員にも2名が選ばれ有力な存在になっています。
 主たる生産物は、大豆です。2000農家が約21万トンを生産し、農協に15万トンの大豆サイロがあります。日本の国産大豆生産の約25万トンに、ほぼ匹敵する生産量を誇っています。大豆の搾油工場を保有して、付加価値を高めています。また、小麦生産も6万トンです。ジェルバ(マテ茶の原料)も1万トン以上生産・加工し、輸出しています。
 この農協の特徴は、活発な組合員教育活動の展開でしょう。常に獣医2名と専門技術員4名が巡回指導を行い、農家の相談に乗っています。さらに、特筆すべきは、組合員子弟の教育支援活動です。将来の農業経営の担い手になる人材に対して、奨学金を支給し、高等学校と大学に進学させています。これに組合の余剰金の1割が充当され、将来の経営者の資質向上を図っています。
 ルーベン・ロズナー組合長(41歳)とリカルド・フォルマイスター参事(47歳)の若い経営陣が、結合・統合を意味する「ウニダス」という名に恥じないようにと、全力を注いでいる姿に言い知れぬ共感を覚えました。
(NPO法人国際開発フロンティア機構会長 山内偉生) (2004.8.31)



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