郡上一揆
定次郎『かよも、白いメシ食べてみな』、かよ『…うまい』。歳のせいか、最近とみに涙腺が弛む。映画「郡上一揆」のこのシーンには涙が止まらない。
夜番から帰った定次郎(緒方直人)に、父親助左衛門(加藤剛)が白いメシをふるまえという。定次郎が、自分によそわれた茶わんから箸で一口、妻かよ(岩崎ひろみ)にそっと差し出す。かよが口に入れる。満面に笑みが広がる。
この映画は神山征二郎監督が助監督時代の30年以上前から温めてきた企画。その理由は、今井正、新藤兼人、山本薩夫ら名監督の薫陶を受けた世代として、良い映画をつくらねばという映画監督としての義務感と農民の子孫としての使命感だという。
農民の子孫としての使命感とは?映画の栞(しおり)によると、神山監督の祖先は、1000年昔から美濃の国に土着して農業をやっていたそうだ。だから、自分は農の子の子孫だと云う自負心にかられる。自身が「田植えもしたし、稲刈りもした。15歳の時には米1俵(60kg)をかついだことだってある。伝統的な農業を知っている最後の世代ととして、この映画をつくらねばという使命感みたいなものを感じた」と語る。
さらに、監督は1960年の第一次安保闘争の年に18歳で東京に出て、映画の世界に身を投じたが、身体の中には”米づくり”、米をつくる民の悲しいほどの”百姓の性”がしみついて離れなかったようだとも述懐している。まさに、監督は60年代に故郷を出て、都会で働いてきた我々世代(今では20世紀おじさん?と言われる)の代弁者。
この映画の制作費は通常の映画の約2倍、4億円かかっているそうだ。しかも、独立プロ作品。「映画『郡上一揆』製作委員会」会長は全農大池裕会長。その大池会長が「心を震わされる作品」が出来たという自信作。かよ役の岩崎ひろみが、白いご飯を食べる幸せを芯から見せる表情が実に良い。このシーンを観るだけで元がとれた気になる。
かよに「白いご飯をお腹いっぱい食べさせる会」をつくろう。ぜひ、劇場に足を…
(だだっ児)