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コラム


湖国近江

 今夏、滋賀県の道の駅「びわ湖大橋米プラザ」を訪ねる機会があった。銀座や心斎橋などのお米ギャラリーの滋賀県版と言えば分かりやすいかも。琵琶湖の東と西を結ぶ琵琶湖大橋の西詰めに、この漸洒な建物がある。
 滋賀県の米は「近江牛」「近江茶」と同じように全部をひっくるめて「近江米」と呼ばれるが、勿論、いろいろな品種がある。その中で代表的な品種といえば「日本晴」。米プラザの中に「日本晴 近江米を支えて30年」という県知事の揮亳が掲げてある。
 滋賀産「日本晴」は安定した気象条件に恵まれ、日本のお米の中で、収量・品質とも最も安定性が高いとの評価を受けてきた。このため、食糧庁や穀物検定協会が行なう全国の食味の基準米として使用されてきた。言うなれば、滋賀産「日本晴」は、昭和時代の近江米を支え、湖国の農業・農家経済を支えてきた。
 しかし、コシヒカリブームのなかで、日本晴も段々影が薄くなる。滋賀は今、「ゆめおうみ」など、平成を支える新しい品種を模索中のようだ。
 滋賀で忘れてならないのが「近江商人」。なかでも商社「伊藤忠」が有名だが、創業者伊藤忠兵衛の座右の銘は「利は勤めるにおいて真」。商人としての本来の役割を果たすことから得た利益だけが真の利益、権力と結託したり、投機や相場の操縦で利を稼ぐごときは邪道としてかたく禁じたらしい。
 また、近江商人の理念として「三方よし」というのがある。「買い手によし」、「売り手によし」は当然のこと、3つ目に「世間によし」が加わるのが特徴。今風にいえば、企業は地域に、社会に貢献しなければその存在価値がないということだろう。
 たしかに、長く滋賀県人に接して、その人は「情」に厚く、「正義」に燃え、「利」に聡い。それは、琵琶湖を抱くように広がる千メートル級の鈴鹿連峰、比叡の山々の麓で、全体の1/6という僅かな水田を営みつづけ、また、他国に出て「近江商人」として活躍した先人たちの労苦が血肉となって延々と流れているせいに違いない。(だだっ児)


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