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コラム


この国のコメはどこへいく

 この11月から新米穀年度がはじまる。米穀年度は11月から翌年の10月までを指し、終わる月の属する年をとることになっている。コメの世界では、暦より一足早く、2002年を迎えるが、食糧庁から、またぞろ、米政策の見直しが提起されている。
 米施策の見直しは、もちろん、小泉首相の唱える「聖域なき構造改革」の農業版だが、大きな「痛み」を強要しようとしている。その痛みは大きくは2つ。その1つは、稲作経営安定対策からの副業的農家の除外。もう1つは、生産調整対策。裏返しに言えば備蓄運営対策。
 平成7年に食糧法が施行されてから、コメのセーフティネット(安全網)が次々にはずされている。政府が買うコメは備蓄分だけ、コメの検査は民営化。おまけに麦も、大豆も民間流通。例えば、今、政府が買い入れているコメ、いわゆる政府米はたかだか数10万トンに過ぎない。国はとっくに国民の主食を守る姿勢を放棄している。
 外堀を攻め、今度はいよいよ内堀。いや、それどころか、8割も占める副業農家を農業から追い出して、水田農業が維持できるのだろうか。美田は荒れ、日本人は日本のコメを食べられなくなるかも知れない。
 30年以上も、農家に生産調整の犠牲を強いながらコメの価格は下がり、コメが余る。であるならば、生産調整は止めるか、それに替わる、それこそ抜本的な対策をうつしかない。シュミレーションによると、生産調整を止めると、コメは8000円にしかならないという。これでは主業農家はつぶれる。
 手はたった1つ。備蓄米を回転備蓄から棚上げ備蓄にすること。150万トン〜200万トンのコメは政府が毎年買い入れ、不測の事態に備える。不測の事態がなければ、海外援助用等にどんどん向け、とにかく1年で処分する。生産者のセーフティネットになり、消費者の食料確保の保険にもなる。
 今、必要なのは水田農業の構造改革ではなく、誰かさんの頭の構造改革では……。なにも、自衛隊派遣だけが海外協力ではないでしょう、小泉さん。 (だだっ児)


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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