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コラム


ワークシェアリング

 不況のトンネルから抜け出せない。不況の原因は、消費者の財布のひもが固いからといわれる。なぜ、財布の口を開かない。それは、将来、年金はもらえるかどうか分からない、医療保険や医療費も上がりそうだという、「先行きの生活不安」がそうさせる。
 今ですら、いつ会社が倒産するか、首を切られ、ホームレスになるか不安のなかで、だれが財布の口を開けるか、となる。生活不安の第一は雇用不安。働き口がないと、生活する土台が崩れ、将来設計どころでなくなる。
 カメラのキヤノン。この不況下で、高収益を確保し、そのブランド価値は、トヨタ、ソニーなどに続き国内第5位に急上昇という。このキヤノンは昭和不況の33年の創業時から、従業員の首を斬らない運命共同体(新家族主義)をモットーにし、この平成不況下でも、「終身雇用」という日本人魂を守りぬくと宣言している。ただ、「終身雇用」といっても、日本式経営のもう1つの特徴であった「年功序列」は廃止し、経営はドライなアメリカ流という(『キヤノン高収益復活の秘密』)。
 世の経営者よ、「キヤノンを見習え」、「終身雇用」を断固守れとは言わないが、「雇用の安定」という、働く者の基本のところがはっきりしないと、個人消費の回復どころではない。
 今年の春闘は「賃金より雇用」、ワークシェアリング(仕事を分かち合う)が労使双方から言い出されている。ワークシェアリング、これはいろんな形態があるそうだが、簡単に言えば、1人当たりの労働時間を短くすることで、多くの人が仕事を分かち合い、雇用を守り、つくり出す手段。経営者側は生産性の低下を、労働者側は賃金の低下を懸念して、なかなか前にすすまないようだ。
 しかし、労使双方、これぐらいの「痛み」を分かち合わないと、それこそ一億郎党のたれ死に。サービス残業やノミニュケーションなんか止めて、さっさと家に帰る。家族皆でご飯を食べ、女房の愚痴も聞く、子供とたまにはキャッチボールをする。年老いた親の介護をする……。ワークシェアリングこそが、日本崩壊を救う唯一の道!(だだっ児)


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